研究課題/領域番号 |
17K07919
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研究機関 | 北里大学 |
研究代表者 |
筒井 繁行 北里大学, 海洋生命科学部, 講師 (20406911)
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研究分担者 |
細谷 将 東京大学, 大学院農学生命科学研究科(農学部), 助教 (60526466)
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研究期間 (年度) |
2017-04-01 – 2020-03-31
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キーワード | ゲノム編集 / IgM / トラフグ / ゼブラフィッシュ |
研究実績の概要 |
本研究は、トラフグにゲノム編集を施し、IgM欠損個体を作出することを第一の目的としている。具体的にはトラフグ受精卵にIgM遺伝子配列に相補的なガイドRNAおよびゲノムDNA切断酵素Cas9をインジェクションし、IgM遺伝子のノックアウトを目指している。 しかしながらトラフグの産卵期は春季に限定されること、かつインジェクションにはある程度の技術が求められることから、初年度は、年中人為的に産卵を誘発でき、かつ成長も早いゼブラフィッシュを用い、IgMのゲノム編集を行うこととした。 まず、ゼブラフィッシュゲノムデータベースからIgM重鎖定常領域の第一エキソン配列を抽出し、制限酵素認識部位(Bam HI)を含むようにガイドRNAを設計した。次に自然産卵によって得たゼブラフィッシュ受精卵約100個に対し、ガイドRNAおよびCas9を顕微鏡下でインジェクションした。受精卵を28℃で飼育し、ある程度の大きさに育った個体をランダムに16個体選別し、ゲノムDNAを抽出した。その後、これを鋳型とし、ガイドRNA認識部位を含む領域約250bpを増幅させるように設計したプライマーでPCRを行った。その後、PCR産物を2等分し、一方を制限酵素Bam HIで処理した。制限酵素処理区および未処理区のPCR産物をアガロースゲル電気泳動に供し、切断の有無を確認することで、ゲノム編集された個体の1次スクリーニングを行った。 電気泳動の結果、6個体のPCR産物において、制限酵素処理後のバンドサイズが未処理区と変化が見られず、ゲノム編集の導入が示唆された。そこで次にこれらの個体由来のPCR産物の塩基配列をダイレクトシーケンス法を用いて解析し、正常個体のそれと比較した。その結果、全ての個体で塩基の欠損が認められた。アミノ酸配列に翻訳したところ、6個体中4個体でフレームシフトが生じており、IgMの欠損が示された。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
3: やや遅れている
理由
当初の予定では初年度からトラフグ受精卵にインジェクションを行いIgM欠損トラフグを作出する予定であったが、技術の習得および試薬の準備に時間をとられ、トラフグの産卵期を逃してしまった。そのため、やむなく初年度は対象魚を急遽ゼブラフィッシュとし、技術の習得に重点を置いた。そのため、トラフグを用いての成果はガイドRNAを得た程度であり、進捗状況は芳しくはない。 しかし今年度実施したゼブラフィッシュを用いた予備実験では、ランダムに選出した16個体のうち、6個体にゲノム編集が導入されており、その導入率は37.5%であった。さらにフレームシフトを生じていた個体は4個体得られ、その成功率は25%と極めて高いものであった。今年度習得した技術をトラフグに応用し、かつインジェクションする受精卵を大量に準備できれば、来年度以降はスムーズに研究を遂行することができるものと考えている。
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今後の研究の推進方策 |
トラフグ産卵期に大量の受精卵を用意し、IgM遺伝子を標的とするガイドRNAおよびCas9をインジェクションする。ゲノム編集導入個体をスクリーニングし、ある程度の体長になるまで飼育した後、ヘテロボツリウム幼生の曝露実験を行う。そして寄生数をワイルドタイプのそれと比較する。
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次年度使用額が生じた理由 |
当初トラフグを用いてゲノム編集を行う予定であったが、トラフグの産卵期および技術的問題により、今年度はゼブラフィッシュを対象魚とした。ゼブラフィッシュおよびその飼育機器は安価なため、次年度使用額が生じた。また、トラフグに対するインジェクションを共同研究先の東京大学大学院農学生命科学研究科附属水産実験所(浜松市)で行う予定であったが、その旅費として計上していた予算も未使用となり、次年度使用額が生じた。 来年度以降は本格的にトラフグを用いた実験を行うため、飼育設備や旅費にあてる予定である。
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