研究課題
2013年5月28日から2015年10月28日までの各月1回、静岡県伊東市の宇佐美湾に流れる烏川、伊東仲川、伊東宮川(以後、仲川と宮川と表記する)の3河川でニホンウナギの採集調査が静岡県水産技術研究所によって行われた。本調査にはエレクトリックショッカーが用いられ、ニホンウナギが採集された。この調査で得られたデータを使用し、本研究では以下の結果を得た。2013年5月から2014年4月までの1年間での3河川の採集個体数(計1699個体)を比較すると、仲川782個体(全体の46%)と烏川724個体(42.6%)で多く、宮川193個体(11.4%)と少なかった。また2014年5月から2015年10月までの1年半での2河川における採集個体数(計2306個体)は、仲川が2074個体(89.9%)と多く、宮川は193個体(10.1%)と少なかった。この結果から、近隣した河川でも個体数に違いがあることが明らかとなった。3河川のシラスの採集個体数を年ごとに比較すると、2014年は4~5月が多く、2015年は2~4月に多かった。また3河川でシラスの加入量(烏川:201個体、仲川:165個体、宮川:30個体)が明らかに異なっていた。クロコの体重が初夏頃のみに増加することから、クロコの成長期間は初夏から夏までと考察した。また、シラスとクロコの春から夏の分布より、その期間は河川を遡上する時期でもあることも推察できた。3河川の水温は伊東仲川、烏川、伊東宮川の順に高く、本種の採集数の多さも同じ順番であった。また、3河川全てで、月の平均水温と黄ウナギの採集数には正の相関(ポアソンの相関係数、p < 0.05)が認められた。すなわち、どの河川においても、水温上昇にともない黄ウナギの採集数も増加し、一方、水温低下とともに採集数も減少していた。出前授業を中学校1件と高校3件、また市民講座を5件行い、ニホンウナギの不思議な生態を紹介し、本種を含む水圏の保全と修復の重要性を伝えた。
2: おおむね順調に進展している
平成30年度に掲げた研究実施計画について、ある程度の結果(研究実績の欄参照)を出すことができ、本研究課題の進捗状況はおおむね順調に進展している。
平成31年度に掲げている研究実施計画(静岡県伊東市宇佐美3河川における黄ウナギの生態、環境DNAの手法の確立、アウトリーチ活動)についての結果を得たい。また、まとめの年として、今までに得られた結果や文献により、ニホンウナギの河川における生態を把握したい。
すべて 2019 2018 その他
すべて 雑誌論文 (6件) (うち国際共著 5件、 査読あり 6件) 学会発表 (5件) 図書 (1件) 備考 (1件)
Deep-Sea Research II
巻: 161 ページ: 120-131
https://doi.org/10.1016/j.dsr2.2018.02.012
Zoological Studies
巻: 57 ページ: -
doi:10.6620/ZS.2018.57-30
Fish and Fisheries
巻: 19 ページ: 890-902
DOI: 10.1111/faf.12298
doi:10.6620/ZS.2018.57-24
Journal of Marine Biology
巻: 2018 ページ: -
https://doi.org/10.1155/2018/6318652
The Anatomical Record
巻: 301 ページ: 111-124
DOI:10.1002/ar.23685
ttps://researchmap.jp/read0156194/