研究課題/領域番号 |
17K07923
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研究機関 | 国立研究開発法人水産研究・教育機構 |
研究代表者 |
岡本 裕之 国立研究開発法人水産研究・教育機構, 増養殖研究所, グループ長 (50372040)
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研究分担者 |
藤原 篤志 国立研究開発法人水産研究・教育機構, 中央水産研究所, 主幹研究員 (30443352)
木下 政人 京都大学, 農学研究科, 助教 (60263125)
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研究期間 (年度) |
2017-04-01 – 2021-03-31
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キーワード | ゲノム編集 / トラフグ / 歯形成 |
研究実績の概要 |
前年度前倒ししてゲノム編集を実施した、切歯形成SCPP遺伝子および歯形成誘導遺伝子Msx1、Msx2、Dax1、Dlx1A、Dlx2A、Dlx3A の共編集試験に加えて、稚魚期に編集個体を体色で選抜できるようアルビノ責任遺伝子の一つであるslc45a2およびチロシナーゼ遺伝子を更なる共編集標的に設定し、3-5種遺伝子領域の同時編集について5種の組み合わせにより試験を行った。(1)slc45a2 motD-1、SCPP1-g1、SCPP2-g1、(2) slc45a2 motD-2、Msx1-E1-g2、Dlx3A-E1-g2、Dax1-E2-g1 、(3) slc45a2 E1-1、Trtyr-sg1、Dlx1A-E1-g1、Dlx2A-E1-g1、Dlx3A-E1-g1、(4) slc45a2 E1-2、Trtyr-sg2、Msx1-E1-g1、Msx2L-E1-g1、(5) Trtyr-sg3、SCPP1-g1、SCPP2-g1。上記5試験区(各数百注入卵)のうち、(1)および(2)区は、卵質が悪く発生時に全滅し、残り3試験区(2+5、3、4)も成長とともに大半が死亡し、また10月令で白点虫症のため、(3)区は1尾のみとなった。(4)区の生存3尾のうち1尾は、アルビノ体色モザイク変異が見られ、編集が確認できた。本年度全期間を通して、全ての試験区の歯の外部形態を観察したが低形成個体は一尾も見られなかった。一方、16年度に作出したSCPP編集F0世代のうち成熟した雌雄を用いて、雌性発生及び通常交配を試みた。雌性発生の2区については全滅したが、通常交配の7区からは、それぞれ数尾ずつ合計23尾が育成できた。その一部には完全ヘテロ変異を有するF1世代が作出されたと考えられるが、全尾、歯の形成は正常であった。今後、各個体の編集遺伝子の有無について解析する予定である。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
SCPP遺伝子に加えてmsx遺伝子等についても同時編集を試みたが、F0で歯形成について異常が見られる個体は得られなかった。但し、変異導入指標となるよう体色関連遺伝子を共編集した試験から、体色モザイク変異個体が一尾得られ、当初の計画になかった成果が得られた。一方、これまでに作出したSCPP遺伝子に対する編集F0個体の一部が成熟したので、予備的にF1ヘテロ世代として11交配区作出し、そのうち7交配区でそれぞれ数尾ずつ稚魚が得られたが(合計23尾)、全て歯の形成に異常は認められなかった。計画に従ってF0およびF1世代での歯の形態観察については予定通り実施できたが、低形成となる個体は残念ながら得られなかった。本年度作出したF1世代には野生型個体が含まれるため、各個体における編集遺伝子の有無については、今後解析する必要がある。
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今後の研究の推進方策 |
歯の形成に関わるカルシウム結合タンパクSCPP遺伝子に加え、新たに歯の誘導形成に関わる3種の細胞分化誘導遺伝子についてF0編集個体を得ることができた。また予備的にSCPP遺伝子に対する編集F1世代を二十数尾作出できたが、生残性が悪く、試験規模が小さくなってしまった。次年度は、より多くのF1世代を作出し、各個体の遺伝子変異の有無と歯の形態の間の相関が明らかになれば、硬骨魚類の歯の形成メカニズムの理解と解明、さらに応用研究につながることが期待される。そのため研究機関の延長を申請することとした。
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次年度使用額が生じた理由 |
前年度同様、歯の形態に異常をきたした編集個体を得られるまで、次世代シークエンサーの解析は延期することとし、ふ化直後の非常に早い発育段階で変異導入個体を分別できる技術開発を中心に研究を実施するため。
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