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2018 年度 実施状況報告書

サンマの産卵経験の有無が回遊様式にあたえる影響の解明

研究課題

研究課題/領域番号 17K07924
研究機関国立研究開発法人水産研究・教育機構

研究代表者

巣山 哲  国立研究開発法人水産研究・教育機構, 東北区水産研究所, グループ長 (70344322)

研究分担者 冨士 泰期  国立研究開発法人水産研究・教育機構, 国際水産資源研究所, 研究員 (50792660)
研究期間 (年度) 2017-04-01 – 2020-03-31
キーワードサンマ / 回遊 / 成熟 / 年齢 / 北太平洋 / 産卵履歴
研究実績の概要

今年度は、北太平洋の広範囲で採集されたサンマについて、初回成熟年齢を明らかにし、その地理的、年による違いを明らかにすることを目的に、生殖腺の観察と、観察した個体の年齢査定をおこなった。
2013年および2014年の6-7月に、日本近海から西経165度までの調査海域で採集されたサンマについて、卵巣中のビクトリアブルー(VB)に濃染される小血管(VB-a)の有無を観察した。これらの小血管を持つ個体は過去に産卵を行った個体であることが飼育実験で証明されている。さらに、これらの観察を行った個体について耳石年輪の観察に基づく年齢査定と年輪径の計測を行った。VB-aを持つ個体は1歳魚のみで、0歳魚には現れなかった。また、両年ともVB-aを持つ個体の割合は西側で高く80%以上に達したが、東側に行くに従い減少した。
分析をおこなった個体のうちVB-aを持つ1歳魚の割合は2013年には25.4%であったのに対し、2014年は59.4%であった。1年目の成熟割合は年によって大きく変わる可能性が示された。
VB-aを持つ個体の年輪径が有意に大きかった。これらのことから、年輪形成時の体長が大きい個体は0歳時に産卵を始めること、西側の方で成長がよいために0歳時に産卵を行う個体の割合が高いことが示唆された。年輪の形成は0歳時の秋に開始するため、この時期の体長が1年目の成熟・産卵に影響を与えていると考えられた。
以上のように、野外における産卵経験の有無を調べることによって、初回成熟年齢、2013年及び2014年における1年目に産卵する個体の割合およびその地理的な差があきらかになった。

現在までの達成度 (区分)
現在までの達成度 (区分)

2: おおむね順調に進展している

理由

研究計画では2年目に経産魚と未産魚の判別技術を野外で採集した標本に応用する予定であった。今年度はVB-aを基準とした経産魚と未産魚の判別技術が野外で採集された個体にも応用が可能であることが示され、1年目に一部の個体が成熟・産卵を開始することが示された。また、成熟・産卵する個体の割合は、地理的、年別に差があることを明らかにできた。また、0歳魚の成長の良否が初回産卵年齢に影響していることが示された。以上の結果は当初の計画通りであり、順調に進んでいると評価した。

今後の研究の推進方策

1年目の成熟割合は年によって大きく変動すること、1年目に成熟するか否かは耳石年輪形成時期の体長に影響を受けることが示唆された。次年度の課題としては下記の3点である。
1つ目は、1年目の成熟割合の年変動を明らかにするため、2015年に採集されたサンマについてVB-aの観察を行い、1年目に産卵を行った個体の割合を求め、その地理的変化を明らかにし、2013年及び2014年の結果と比較する。成熟率の年変動は長期間にわたってデータを築盛する必要があるが、そのモニタリングのための基礎技術を確立する。
2番目はVB-aの有無を分析した1歳魚について、年輪の形成が開始する1年目の成長について耳石日周輪による成長解析を行い、1年目に成熟する原因が孵化時期の違いか成長の速さの違いかを明らかにする。
最後に、2014年に採集された1歳魚の0歳時における成長様式の海域による違いを明らかにしたうえで、2013年に採集された0歳魚の成長様式の地理的な変化(2017年度成果)と比較する。以上の結果をこれまで得られた冬季の産卵場における産卵魚の生物特性の特徴と合わせて、0歳から1歳における回遊様式を成熟する個体としない個体で違いがあるかを推測する。

次年度使用額が生じた理由

論文投稿を予定して投稿費等を計上していたが、請求がまだ来ていないため、支払いを翌年度にのばしたたため。

  • 研究成果

    (6件)

すべて 2019 2018

すべて 雑誌論文 (2件) (うち査読あり 2件) 学会発表 (4件)

  • [雑誌論文] Geographical variation in spawning histories of age1 Pacific saury Cololabis saira in the North Pacific Ocean during June and July2019

    • 著者名/発表者名
      Satoshi Suyama, Hitomi Ozawa, Yasutoki Shibata, Taiki Fuji1, Masayasu Nakagami, Akio Shimizu
    • 雑誌名

      Fisheries Science

      巻: 85 ページ: 1-13

    • DOI

      10.1007/s12562-019-01308-0

    • 査読あり
  • [雑誌論文] Genetic and morphological variation in Pennella sp. (Copepoda: Siphonostomatoida) collected from Pacific saury, Cololabis saira2018

    • 著者名/発表者名
      Satoshi Suyama1 & Yoshio Masuda, Takashi Yanagimoto, Seinen Chow
    • 雑誌名

      Marine Biodiversity

      巻: 21 ページ: 1-13

    • DOI

      10.1007/s12526-018-0901-x

    • 査読あり
  • [学会発表] 主産卵期におけるサンマ成魚の分布・成熟特性2018

    • 著者名/発表者名
      冨士 泰期, 栗田豊, 巣山哲
    • 学会等名
      平成31年度日本水産学会春季大会
  • [学会発表] 北太平洋移行領域における植物プランクトンの群集構造の地理的変化と海洋環境の関係2018

    • 著者名/発表者名
      渡辺 剛, 宮本 洋臣, 谷内 由貴子, 巣山 哲, 冨士 泰期, 葛西 広海, 田所 和明
    • 学会等名
      日本海洋学会2018年度秋季大会講演要旨集
  • [学会発表] サンマ主要漁期における近年の北太平洋西部亜寒帯循環2018

    • 著者名/発表者名
      黒田 寛, 巣山 哲, 宮本 洋臣, 瀬藤 聡
    • 学会等名
      2018年度水産海洋学会研究発表大会講演要旨集
  • [学会発表] サンマ来遊予測モデルの開発2018

    • 著者名/発表者名
      筧 茂穂, 阿保 純一, 巣山 哲, 冨士 泰期, 石村豊穂, 白井厚太朗, 伊藤進一
    • 学会等名
      日本海洋学会2018年度秋季大会講演要旨集

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公開日: 2019-12-27  

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