研究課題/領域番号 |
17K07927
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研究機関 | 国立研究開発法人水産研究・教育機構 |
研究代表者 |
岡崎 雄二 国立研究開発法人水産研究・教育機構, 東北区水産研究所, 主任研究員 (90392901)
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研究期間 (年度) |
2017-04-01 – 2020-03-31
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キーワード | 仔稚魚 / 食性 / 窒素・炭素安定同位体比 / 成長 |
研究実績の概要 |
今年度は,土佐湾で2009年4月と2011年3月に採集された標本を用いて、マイワシ、カタクチイワシ、ウルメイワシ及びサバ属の仔稚魚の窒素・炭素安定同位体比分析および食性分析を行った。仔稚魚の安定同位体比分析の結果より、15N/14N窒素安定同位体比は2009年4月の方が2011年3月より高い傾向にあった。また、13C/12C炭素同位体比についても2009年4月の方が2011年3月より高い傾向にあった。魚種間の比較では、2009年4月はウルメイワシの15N/14N窒素・13C/12C炭素安定同位体比がその他の種類より高い傾向にあった。一方、2011年3月はマイワシとサバ属のみの比較であるが、15N/14N窒素安定同位体比の違いは小さかったが、13C/12C炭素同位体比はサバ属の方が高くなる傾向にあった。このような同位体比の違いは、季節的な栄養塩動態や水温の違いに起因することも考えられるが、各魚種の体長と同位体比の関係に弱い相関関係も認められる場合もあるため、今後はこのような体サイズの影響も考慮しながら様々な栄養塩環境や水温環境で採集された標本を用いて分析を進める予定である。 食性解析の結果より、2009年4月に採集されたマイワシ・カタクチイワシ仔魚はParacalanusやそのコペポダイト幼生を多く摂餌していたが、2011年3月に採集されたマイワシ仔魚はParacalanus以外の餌を多く摂餌しており、餌生物の多様性も高くなっていた。このような食性の違いが現場の餌環境や同位体比の違いと、どのような関連性があるのか来年度以降研究を進める予定である。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
研究初年度である今年度は、所属研究所に保管している冷凍標本に含まれる対象仔稚魚の組成を把握して、複数種が含まれる標本を中心に選別を行い一部の標本については安定同位体比分析および食性分析を進めた。また、所属研究所外に保管してあった仔稚魚標本および動物プランクトン標本についても整理を行い、次年度以降の分析に向けて準備を進めた。さらに成果の一部については、学会において発表を行っており計画は概ね達成された。
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今後の研究の推進方策 |
前年度に引き続き、仔稚魚標本の消化管内容物分析および安定同位体比分析を進めると同時に、既に分析が終了している環境中の動物プランクトンデータの整理を進める。また、消化管内容物の査定結果や既往知見に基づいて動物プランクトンの冷凍標本より餌生物となる動物プランクトンを選別し炭素・窒素安定同位体比分析用の試料を作成する。以上の仔稚魚および動物プランクトンの炭素・窒素安定同位体比のデータセットが揃った段階で、安定同位体比の分析ソフトを用いて解析を行い、仔稚魚が過去に利用していた餌組成(餌資源の寄与率)や食物網構造の特徴を推定する。 さらに、成長と摂餌状態の関係性を明らかにするために、耳石の輪紋解析を進める。耳石解析については、H29年度は試料準備を進めたが、H30年以降は分析および解析を行う予定である。 なお、申請段階では新たな試料の採集は行わない予定であったが、想定より仔稚魚の空胃個体が多い事や複数種が存在する標本が少ないことから、H30年度は調査船航海に乗船して混合水域におけるイワシ類・サバ属仔稚魚および動物プランクトンの試料の確保を行う予定である。
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