サケ類の母川回帰には,幼稚魚期の降河時に母川のニオイを記憶する母川刷込が重要である。そのニオイには母川水中のアミノ酸組成が関わることが知られているが,他の有機化合物についての詳細は不明である。本研究では,北海道南部八雲町の遊楽部川水系とそこに回帰・産卵するサケを研究対象とし,水系内の近接する母川と非母川から河川水を採集し,その中に含まれる有機化合物を網羅的に分析・比較することで新規の母川刷込ニオイ候補分子を探索し,母川に対するサケ回帰親魚の行動解析とニオイ刺激で興奮する神経細胞の可視化の手法を確立し,サケ母川刷込におけるニオイの想起に関わる神経回路と新たな刷込ニオイ分子の一部を明らかにした。
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