1.両性担体を用いない等電点電気泳動分画(Autofocusing法)を活用した魚肉抗炎症ペプチドの濃縮: 「特定の魚肉消化ペプチド画分にメイラード反応を用いてアルギン酸オリゴ糖(AO)を導入し,抗炎症ペプチドを効率的に創出する」という本計画の着想は,Autofocusing分画したAO修飾ペプチドの酸性画分だけが強い抗炎症作用を示す,という事実に基づく。しかし,抗炎症機能が発現する最適条件をAutofocusing画分ごとに検討したところ,発現効果の大小はあるが全てのペプチド画分でAO修飾による抗炎症作用が認められた。この結果より,Autofocusingの酸性画分における抗炎症機能ペプチドの濃縮は,酸性ペプチドへのAOの選択的結合に起因するのではなく,AOのもつ負電荷によってAO修飾ペプチドが酸性領域に移動・濃縮された結果であると結論づけた。 2.糖鎖導入による抗炎症作用の付与に関わる修飾糖の特徴: 抗炎症機能の発現メカニズムを議論するため修飾糖類の分子構造と抗炎症作用の増強効果の関連を検討したところ,AO分子中のカルボキシル基,すなわちウロン酸特有の構造が抗炎症機能の発現に重要であることを確認した。 3.AO修飾によるコラーゲンペプチドへの抗炎症機能の付与: チョウザメ脊索より調製したⅡ型コラーゲンにおいても,魚類Mfと同様,AO修飾によるTNF-α産生抑制効果の付与を確認できた。それゆえメイラード反応を用いたAO修飾は,魚類タンパク質の種類によらず,消化ペプチドに抗炎症効果を付与しうる汎用性の高い機能改変技術であると判断した。
以上の知見は,抗炎症機能の強い魚肉ペプチドを各種のタンパク質から創製する際の重要な情報であり,今後の活用が期待できる。
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