研究課題/領域番号 |
17K07934
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研究機関 | 名古屋大学 |
研究代表者 |
山本 直之 名古屋大学, 生命農学研究科, 教授 (80256974)
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研究期間 (年度) |
2017-04-01 – 2020-03-31
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キーワード | 背鰭 / 誘引突起 / エスカ / カエルアンコウ / 運動系 / 運動ニューロン |
研究実績の概要 |
カエルアンコウは“釣り行動”を行う。棒の先端にゴカイのようなものがついた装置(それぞれ、誘引突起とエスカと呼ばれる)が頭部にあり、これを動かして小魚を誘引捕食する。この装置は背鰭が特殊化したものでありすなわち第1背鰭と呼ぶことも可能である。しかし、誘引突起とエスカは“釣り行動”の時のみに使われ、遊泳には関与しない。このため、遊泳に関わる通常の背鰭と異なった神経制御を受けているはずである。本研究はこのような特殊な行動の獲得に伴って、運動制御系がどのように進化したのかを明らかにする。比較対象となるべき通常の鰭の運動制御系に関する知見もほとんどないため、これについてもカエルアンコウ以外の魚種を含め総合的な調査することを目指している。なおカエルアンコウの第2、第3背鰭はあまり動かないため、やはり遊泳とは無縁と思われる。一番後方にある第4背鰭は大きく、通常の背鰭の形態をもち、遊泳運動に関わっている。 今年度は、カエルアンコウの誘引突起の運動を司る運動ニューロンの同定と中枢内分布を神経トレーサー実験によって、次年度以降実施する他の鰭の運動を支配する運動ニューロンを調査するための土台として各鰭に向かう末梢神経を顕微解剖によって調査した。またエスカの変形のメカニズムの調査に着手して、エスカの組織構築を調査した。キンギョの鰭運動ニューロンのとティラピアの鰭運動制御に関わると考えられる中脳の神経核に関する神経トレーサー実験も開始した。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
1: 当初の計画以上に進展している
理由
カエルアンコウの誘引突起の運動を司る運動ニューロンは、パイロット実験によって示唆されていた脊髄の特異な領域に存在することが改めて確認できた。また、遊泳に関わる通常の第4背鰭の運動ニューロンが脊髄内で占める位置は、他の魚種で報告されている場所と同じであることも分かった。“釣り行動”の進化に伴って、誘引突起の運動を司る運動ニューロンが脊髄内における特異な分布を示すようになった可能性を支持している。 各鰭に向かう末梢神経の調査は現在進行中であり、すでにかなりの情報を得たが、すべての鰭の支配神経を完全に明らかにするまでは至っていない。 エスカの変形メカニズムに関しての実験では、エスカ内に多数の神経線維が分布していることが明らかになった。これらの神経線維が変形を引き起こす可能性がある。 キンギョの鰭運動ニューロンについては、また少数例が得られたのみである。ティラピアの鰭運動制御に関わると考えられる中脳の神経核に関しては、どこから情報の入力を受け、どこに軸索を送っているのかがほぼ明らかになり、現在論文を執筆中である。また、この神経核に関する議論を含む総説を執筆した。
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今後の研究の推進方策 |
カエルアンコウの脊髄腹角には誘引突起の運動を司る運動ニューロン以外にも運動ニューロンが存在している。後者の運動ニューロンがどのような筋を支配しているのか今後調査する。これは、カエルアンコウの誘引突起の運動を司る運動ニューロンの分布の特異性を論文として報告する際に必要な情報である。各鰭に向かう末梢神経の調査はなるべく早期に終了して、各鰭の運動ニューロンの同定と脊髄内分布の調査を開始したいと考えている。エスカ内に分布する神経線維がどこに由来するのかに関して調査を開始する。これらにカエルアンコウついてのデータは平成30年度にまずは学会報告したい キンギョの鰭運動ニューロンについては、実験を継続して例数を増やす必要がある。ティラピアの鰭運動制御に関わると考えられる中脳の神経核に関しては、現在執筆中の論文原稿をなるべく早い時期に完成し、国際学術雑誌に投稿したい。
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次年度使用額が生じた理由 |
カエルアンコウが思っていたほど入手できず、その経費が予定よりも低かったことが、次年度使用額が生じた主な理由である。次年度は入手経路の新たな開発を含め、より多くの個体数を購入したいと考えているため、翌年度分として請求した助成金を合わせて使用する。
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