研究課題
カエルアンコウは“釣り行動”を行う。棒の先端にゴカイのようなもの(疑似餌として機能する)がついた装置(それぞれ、誘引突起とエスカと呼ばれる)が頭部にあり、これを動かすことによって誘引された小魚を瞬時に捕食する。この装置は骨学的および筋学的な知見から背鰭が特殊化したものであることがわかっている。すなわち特殊化した第1背鰭である。しかし、誘引突起とエスカは“釣り行動”の時のみに使われ、遊泳には関与しない。このため、遊泳に関わる通常の背鰭と異なった神経制御を受けているはずである。本研究はこのような特殊な行動の獲得に伴って、運動制御系がどのように進化したのかを明らかにする。比較対象となるべき通常の鰭の運動制御系に関する知見もほとんどないため、これについてもカエルアンコウ以外の魚種を含め総合的な調査することを目指している。なおカエルアンコウの第2、第3背鰭はあまり動かないため、やはり遊泳とは無縁と思われる。一番後方にある第4背鰭は大きく、通常の背鰭の形態をもち、遊泳運動に関わっている。平成29年度は、カエルアンコウの誘引突起および第4背鰭の運動を司る運動ニューロンの同定と中枢内分布を神経トレーサー実験によって明らかとした。平成30年度は、第2および第3背鰭の運動を支配する運動ニューロンの調査を行った。平成31・令和元年度は、この3年間で得られた結果全体を比較検討した。そん結果、第1背鰭の運動ニューロンは他の背鰭の運動ニューロンとは異なる位置に存在することが明らかとなった。本研究が明らかとした、機能の変化に伴う鰭運動ニューロンの位置変化はこれまで報告がなく、重要な成果と言える。ティラピアの鰭運動に関わると考えられる中脳の神経核の神経連絡を調査した結果、実際に胸鰭の運動制御を行うことを示唆する結果を得た。成果をまとめて論文として公表した。
すべて 2019
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