研究課題/領域番号 |
17K07938
|
研究機関 | 高知大学 |
研究代表者 |
深田 陽久 高知大学, 教育研究部自然科学系農学部門, 准教授 (10380304)
|
研究期間 (年度) |
2017-04-01 – 2020-03-31
|
キーワード | ブリ / ニューロペプタイドY / コレシストキニン / 食欲 / 消化 / 摂餌量 |
研究実績の概要 |
摂餌量を増加させるために不可欠な「摂餌刺激物質」については、ニューロペプタイドY(Npy)の遺伝子発現量を指標として検索を行ってきた。昨年度は脳の視床下部における応答で旨味物質の摂餌刺激効果を推定したが、実際の摂餌量と矛盾が生じることがあった。そこで、本年度は、計画を変更して、より嗅覚に関わる嗅球・終脳におけるnpy遺伝子の応答を確認した。魚粉の水溶性画分をブリ飼育水中に添加し、添加前(絶食後)、添加10、30、180分後のnpy遺伝子を測定した。その結果、npy遺伝子発現量は絶食によって脳のいずれの部位(嗅球・終脳・視床下部・小脳)においても増加し、魚粉水溶性画分の添加によって減少することが分かった。また、魚粉の水溶性画分に遊離アミノ酸としてTau、Ala、His、Lys等が多く含まれ、核酸物質としてイノシン酸が多く含まれることがわかり、これらがnpy遺伝子発現量の変化(摂餌量)に関わることが推察された。 摂餌量を増加させるために不可欠な「消化促進物質」については、幽門垂の器官培養系において、コレシストキニン(Cck)の遺伝子発現量を指標として検索を行った。アミノ酸(50 mM)のうちTrp、Gln、Phe、Pro、Ala、Leu、Metでcck遺伝子発現量の増加が認められた。核酸物質であるイノシン酸の単独添加、またはアミノ酸との複合添加によるcck遺伝子発現量の増加は認められなかった。 上記の結果を踏まえ、遊離アミノ酸と核酸物質を豊富に含む酵素消化魚粉を低品質な魚粉に添加したところ、成長成績等の改善が見られた。
|
現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
「摂餌刺激物質」については、物質の同定をより確実にするために視床下部以外の部位でのnpy発現量を解析した。その結果、嗅覚の中枢である嗅球・終脳、味覚の中枢である小脳においてもnpyが食欲の中枢である視床下部と同様に変化することを明らかにした。これによって、より確実に研究を遂行できる。また、魚粉中の有効と考えられる物質も推定できた。 「消化促進物質」についても、有効と考えられるアミノ酸をほぼ確定できた。 事前検討として行った、飼料改善でも成長改善が見られている。最終年度に「摂餌刺激物質」と「消化促進物質」の関連解析がずれ込むが、H31年度は予定通り、低魚粉飼料を用いた飼育試験を実施する予定である。
|
今後の研究の推進方策 |
「摂餌刺激物質」については、これまでのnpyを指標とするとともに、水槽中への添加による「摂餌行動解析」も併せて有用な物質を確定する。「消化促進物質」については、cckを指標として幽門垂培養系を確立し、より正確に有用な物質を検索できる様になった。これを用いて有効なアミノ酸を同定し、必要に応じて摂餌刺激効果を有するアミノ酸との複合添加による消化促進効果を評価する。 上記の結果に基づき、低魚粉飼料へアミノ酸等の添加を行い、成長の改善効果を評価する。
|