摂餌量を増加させるために不可欠な「摂餌刺激物質」については、ニューロペプタイドY(npy)の遺伝子発現量を指標として検索を行ってきた。昨年までに魚粉の水溶性画分をブリ飼育水中に添加し、添加前(絶食後)、添加10、30、180分後のnpy遺伝子を測定した。その結果、npy遺伝子発現量は絶食によって脳のいずれの部位においても増加し、魚粉水溶性画分の飼育水への添加によって減少することが分かった。食欲亢進ホルモンが減少するという想定外の減少が見られたため、本年度はブリの摂餌刺激物質であるアミノ酸(アラニン・プロリン)を用いて再検討を摂餌行動解析とともに行った。その結果、嗅覚刺激の強いアラニンでは、摂餌行動のうち、餌を探索する行動が多く見られた。また、npy遺伝子発現量(嗅球・終脳・視床下部)は、魚粉水溶性画分を飼育水に添加した時と同様に減少した。一方、味覚刺激の強いプロリンでは、摂餌行動のうち、口に咥える行動が多く見られた。npy遺伝子発現量(嗅球・終脳・視床下部)は、変化しなかった。以上のことから、嗅覚を介した摂餌誘起にはnpyが関与していることがわかり、摂餌には嗅覚と味覚の両方の刺激が必要であることが分かった。 摂餌量を増加させるために不可欠な「消化促進物質」については、幽門垂の器官培養系において、コレシストキニン(Cck)の遺伝子発現量を指標として検索を行った。cck遺伝子発現量の増加が認められたアミノ酸のうちPheとLeuを濃縮大豆タンパク質(SPC)へ混合し、ブリ幼魚に経口投与した結果、アミノ酸単独、イノシン酸単独、イノシン酸共存下のPhe添加で顕著なcck遺伝子発現量の誘導が見られた。これは昨年度の結果とは異なり、飼料に用いるタンパク質源によって消化促進に有効なアミノ酸が異なる事が示唆された。
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