本年度は、寄生原虫に対する傷害活性に関わるギンブナCD8陽性T細胞の抗原受容体を明らかにする。前年度までの遺伝子発現解析の結果から、魚類のNK細胞と同様の機能を有するNonspecific cytotoxic cells(NCCs)の受容体であるNon-specific cytotoxic cell receptor protein-1(NCCRP-1)をI.multifiliis認識受容体の候補とした。まず、NCCRP-1の細胞外ドメインの一部の配列から作製したペプチドを免疫原として、抗ギンブナNCCRP-1ポリクローナル抗体を作製した。その抗体を用いてウエスタンブロッティング解析を行ったところ、ギンブナCD8陽性T細胞は他の白血球と同様にNCCRP-1タンパク質を発現していた。さらに、NCCRP-1がI.multifiliisの抗原認識に関与しているかを確かめるため、ギンブナNCCRP-1の細胞外ドメインの配列を基に3種類のペプチドを合成し、それらのペプチド添加によるギンブナCD8陽性T細胞のI.multifiliisに対する細胞傷害活性の抑制効果を調べた。その結果、1種類のペプチドで有意に活性を低下させることが分かり、NCCRP-1がCD8陽性T細胞の寄生虫抗原認識受容体であることを明らかにするとともにNCCRP-1のI.multifiliis抗原認識部位を特定することができた。T細胞がNCCRP-1を発現し抗原認識受容体として働いているという報告は無く、これらの成果は魚類のT細胞が哺乳類のNK細胞に相当する役割を担っていることを示す初めての報告であり、比較免疫学において重要な知見を付与するものである。
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