研究実績の概要 |
本研究では分子生物学的手法を用い、 魚類抗酸化酵素遺伝子の制御領域の解析並びに酸化ストレス応答に関連する転写制御因子を探索すること、次いで魚類培養細胞株やヒラメマクロファージの初代培養系によってエドワジエラ症の原因菌Edwardsiella tarda (E.tarda) 等の暴露に伴う酸化ストレスに対する抗酸化酵素の応答機構を分子レベルで明らかにすることを目的とした。
ヒラメCu,Zn-SOD遺伝子5’-上流領域 ( -1,124 / -1 ) の種々の欠失ミュータントを用いたプロモーター活性解析の結果、E.tarda強毒株及び弱毒株由来flagellin刺激による転写活性の有意な上昇、並びに抗酸化剤N-acetylcysteineによる阻害を確認した。従って、本研究を通じてE.tarda菌体外産生物質 (ECP) の主要構成成分である鞭毛構成タンパク質flagellinが酸化ストレスを誘導し、転写活性化に関わることが明らかになった。更に、酸化ストレスに伴うCu,Zn-SODの転写活性化に関わる発現調節部位は、強毒株flagellin刺激ではNF-IL6認識配列 ( -202 / -194 ) 及びC/EBPα認識配列 ( -106 / -102 ) である一方、弱毒株flagellin刺激ではC/EBPα認識配列 ( -106 / -102 ) であると推定された。 一方、E.tarda両菌株由来flagellinをRAW.264.7細胞に暴露したところ、NO及びTNFαの産生誘導が確認された。更に、MAPキナーゼ (ERK, p38, JNK) 特異的インヒビター存在下、非存在下で培養後、経時的に回収し、NO及びTNFαの産生能を調べた結果、flagelln刺激に伴うNO及びTNFα産生誘導には、MAPキナーゼカスケードのJNK経路が介している可能性も示唆された。
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