研究課題/領域番号 |
17K07944
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研究機関 | 琉球大学 |
研究代表者 |
小西 照子 琉球大学, 農学部, 教授 (30433098)
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研究期間 (年度) |
2017-04-01 – 2020-03-31
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キーワード | 海藻 / 多糖 / フコイダン |
研究実績の概要 |
フコイダンは褐藻類に含まれる細胞壁多糖であり、主鎖にフコース残基、側鎖にグルクロン酸残基などを有する。フコイダンの生合成機構は未だ明らかでないが、基質としてGDP-フコース、アクセプターとしてフコイダンオリゴ糖、およびフコース転移酵素が必要であると考えられる。本研究では基質であるGDP-フコースの生合成に着目して研究を行っている。平成30年度は、オキナワモズクのゲノムよりGDP-フコースの合成に関与する酵素(フコースキナーゼ/GDP-フコースピロホスホリラーゼ;FKGP)の候補遺伝子を単離し、大腸菌にて組換え酵素の作成を行った。その結果、組換え酵素の作成には成功したものの、酵素活性を検出できなかった。そこで、オキナワモズクのゲノム情報を詳細に再解析したところ、FKGPの候補遺伝子として単離した遺伝子配列は、FKGPとしてアノテーションされていたものの完全長ではなく部分配列の可能性が高いことがわかった。新たな候補遺伝子の配列はフコース結合部位やピロホスホリラーゼに必要なATP結合部位を有しており、真の遺伝子である可能性が高かった。 また、フコイダンの生合成にはアクセプターであるフコイダンオリゴ糖が必要であるが、フコイダンオリゴ糖は市販されていないため自ら調製しなければならず、オキナワモズク由来フコイダンのオリゴ糖調製を行った。その結果、オキナワモズク由来フコイダンをTFAで部分加水分解し、分解物をゲルろ過クロマトグラフィーに供した結果、数種のオリゴ糖画分を得た。そのうちの一つをNMRで解析したところ、フコビオースにグルクロン酸が1つ付加された三糖であることがわかった。また、その他にフコース1モルに対し2モルの硫酸基が付加されたフコース単糖も得られることがわかった。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
3: やや遅れている
理由
GDP-フコース合成に関与する酵素(フコースキナーゼ/GDP-フコースピロホスホリラーゼ;FKGP)の候補遺伝子を単離し、大腸菌による組換え酵素の作成には成功したものの、酵素活性を検出できなかった。オキナワモズクのゲノム情報では、FKGPとしてアノテーションされた遺伝子は2種類存在し、その2つの遺伝子はゲノム上では連続して並んでおり、その連続した2つの遺伝子から成るものがFKGPの完全長の配列である可能性が高く、現在はFKGP候補遺伝子の完全長を新たにクローニングし、組換え酵素を作成している。GDP-フコース合成に関連する酵素の解析としてはクローニングし直したものの、ほぼ予定通り進んでいる。 しかし一方で、[14C]グルコース、[14C]マンノース、または[14C]フコースのフコイダンへの取込み実験は今年度も実施出来なかった。これは、オキナワモズク藻体の培養が成功せず、同条件で生育したオキナワモズクを得られなかったことが原因である。また、オキナワモズク養殖の現場においても、H30年度は不凶作であり、実験に用いるオキナワモズクを十分に確保できなかった。 以上のことから、進捗状況を「やや遅れている」と判断した。
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今後の研究の推進方策 |
今年度はオキナワモズクの水槽での培養法を確立し、オキナワモズク藻体を常時確保できる状態とした。そのため、[14C]グルコース、[14C]マンノース、または[14C]フコースのフコイダンへの取り込み実験を行うことが可能となり、オキナワモズク細胞内におけるGDP-フコースの合成経路を明らかにできる見込みである。もしオキナワモズク藻体が確保できなかった場合は、オキナワモズクの盤状体の培養は確実に行えることから、糸状体の代わりに盤状体を用いた取り込み実験を行う予定である。また、GDP-フコースの合成酵素に関与する酵素については、既にフコースキナーゼ/GDP-フコースピロホスホリラーゼ遺伝子のクローニングを行い、大腸菌で組換え酵素を作成するためのコンストラクトを構築済みである。今後は、得られた組換え酵素を精製し、酵素活性試験を行う予定である。
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次年度使用額が生じた理由 |
[14C]グルコース、[14C]マンノース、または[14C]フコースのフコイダンへの取込み実験を実施出来なかったため、取り込み実験に必要な試薬類を購入しなかった。そのため次年度使用額が大きくなっているが、翌年度の実験では取り込み実験を行うため、翌年度分として請求した助成金と合わせて[14C]グルコース、[14C]マンノース、または[14C]フコースを購入する予定である。
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