研究実績の概要 |
フコイダンは褐藻類に含まれる細胞壁多糖であり、主鎖にフコース残基、側鎖にグルクロン酸残基などを有する。フコイダンの生合成機構は未だ明らかでないが、基質としてGDP-フコース、アクセプターとしてフコイダンオリゴ糖、およびフコース転移酵素が必要であると考えられる。本研究では基質であるGDP-フコースの生合成に着目して研究を行っている。令和元年度はオキナワモズクのゲノムよりGDP-フコースの合成に関与する酵素(フコースキナーゼ/GDP-フコースピロホスホリラーゼ;FKGP)遺伝子の完全長の単離に成功し、組換え酵素の酵素特性について解析を行った。本研究の結果、本酵素遺伝子は全長が4.9kbpであり、N末端側にGTP結合モチーフ、C末端側にフコース結合モチーフおよびATP結合モチーフが保存されていることがわかった。大腸菌を用いて作成した組換えFKGPの酵素活性を測定したところ、フコースからGDP-フコースの生成を確認し、フコースキナーゼ活性およびGDP-ピロホスホリラーゼの両活性を有することが明らかとなった。また、酵素活性の至適温度は30℃~40℃の間にあり、至適pHはpH8であった。GDP-フコースはde novo経路またはサルベージ経路により合成され、FKGPはサルベージ経路のGDP-フコース合成に関与する酵素である。一方、de novo のGDP-フコース合成経路では、GDP-マンノース4,6デヒドラターゼ(GMDH)およびGDP-フコース合成酵素(GFS)の2つが関与するがGMDHおよびGFSの両遺伝子をオキナワモズクから単離し、組換え酵素の作成を行い、両酵素の酵素活性について検討している。
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