研究課題/領域番号 |
17K07951
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研究機関 | 国立研究開発法人水産研究・教育機構 |
研究代表者 |
杉浦 義正 国立研究開発法人水産研究・教育機構, 水産大学校, 准教授 (60608107)
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研究分担者 |
勝崎 裕隆 三重大学, 生物資源学研究科, 准教授 (10262990)
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研究期間 (年度) |
2017-04-01 – 2021-03-31
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キーワード | フロロタンニン / 腸管免疫 / 遅延型アレルギー / 脱顆粒抑制 |
研究実績の概要 |
アレルギーのBALB/cマウスにフロロタンニン濃縮物を21日間経口投与して、腸管免疫への影響について調べた。最終日に糞の回収、採血とパイエル板の摘出を行った。パイエル板において、IL-4産生の抑制、IFN-γ産生の上昇傾向がみられた。また、IgA抗体産生は、糞中、パイエル板、血清中ともに有意な変動はみられなかった。腸管免疫(免疫寛容など)に関与する腸内細菌について、16S rRNA量を指標に糞中の菌体量を調べた結果、BifidobacteriumとBacteroides属は検出されず、Clostridium属は増加が確認された。遅延型アレルギーを誘導したICRマウスに濃縮物を経口投与し、血清、脾臓、耳介におけるIgE抗体やサイトカイン産生への影響を確認した。耳介や脾臓細胞におけるサイトカインmRNA発現について調べたところ、IL-4 mRNAの低下、IL-10 mRNAの上昇がみられるなど、Th1/Th2バランスの改善が確認された。また、脾臓および耳介のサイトカイン産生量は、IL-4、IFN-γ産生ともに低下しており、免疫抑制の傾向が伺われた。さらに、血清中のIgEレベルは、低下傾向が確認された。脱顆粒抑制機序を調べる実験では、今年度は対照物質(EGCG, manidipine, staurosporine)についてデータ取りを行った。予備検討で、100 microM manidipineとEGCG、10 microM staurosporineでRBL細胞に対して十分な脱顆粒抑制が認められたので、PCKαリン酸化に対する阻害を10 microM staurosporine と100 microM EGCGで、Ca2+流入に対する阻害を100 microM manidipineとEGCGでそれぞれ計測した。その結果、何れの場合も、十分な阻害効果が確認された。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
腸管吸収モデルのヒト結腸癌由来細胞(Caco-2)を用いた実験で、経時的なフロロタンニン類の吸収が確認された。Caco-2細胞の応答についてIL-8産生を指標に確認したところ、その産生が抑制されたので、消化管におけるアレルギー性の炎症が抑制される可能性が見出された。また、透過液はRBL細胞の脱顆粒を抑制したので、吸収されたフロロタンニンも有効性を保持する可能性が示された。脱顆粒抑制機序に関する解析では、フロロタンニン濃縮物が脱顆粒のキーエンザイムであるPKCαのリン酸化と、細胞内へのCa2+流入を阻害することが判明した。フローサイトメトリーによるフロロタンニンの免疫調節作用の解析では、食物アレルギーモデルマウスにおいて、T細胞サブセット全体では低下傾向であったが、そのうちの制御性T細胞(Treg)は増加傾向であった。そのため、フロロタンニンはTreg細胞に特異的に作用して活性化し、抗アレルギー様の作用を示す可能性が示唆された。B細胞数に対しては影響を及ぼしていないことが分かり、IgEレベル低下は、B細胞のIgE産生抑制を介していない可能性が考えれた。更に、平成31年度の研究成果を合わせると、概ね順調に研究は進捗しているものと判断する。
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今後の研究の推進方策 |
次年度は、自然型アレルギー(皮膚バリア破壊)およびアトピー性皮膚炎に対するフロロタンニンの有効性を検証する。具体的には、血清および脾臓におけるサイトカイン(IL-5, IL-33, TSLP)とIgE産生などを指標として評価する。また、腸管免疫や遅延型アレルギーに対する有効性について、検討が不十分であった内容を採取年度に確認する。具体的には、腸管免疫への影響については、フロロタンニン投与期間中の糞の分析を行う。遅延型アレルギーについては、IL-4、IFN-γ以外の抗体産生について、ELISA法で計測を進める。
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次年度使用額が生じた理由 |
平成30年度に大幅な繰越金額となったため。最終年度の令和2年度中に、ELISA kit購入などで消化する。
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