組換えニホンウナギ濾胞刺激ホルモン(reFsh)投与により催熟した場合に比べ、組換えニホンウナギ黄体形成ホルモン(reLh)投与により催熟したニホンウナギから得た精液中の運動精子の割合が著しく高値を示したことから、reLh投与個体から得た精漿(Lh精漿)によるreFsh投与個体から得た精子(Fsh精子)の活性化を試みた。その結果、Fsh精子を自身の精漿で24時間培養した場合に比べ、Lh精漿中で培養した場合の運動精子の割合は約3倍に増加した。また、Lh精漿を脱塩処理した場合はその活性化効果は認められなかったが、脱塩後、塩化カリウムを加えることによりその効果が回復したことから、精漿中のカリウムが精子の運動能に不可欠であることが明らかになった。 密度勾配遠心法および細胞培養プレートに対する接着特異性を利用することにより、未熟精巣からセルトリ細胞、ライディッヒ細胞および生殖細胞を高純度かつ大量に分離することに成功した。分離したセルトリ細胞およびライディッヒ細胞に、reFsh、reLhおよび11-ケトテストステロンを添加し培養した後、生殖関連遺伝子の発現を調べた。その結果、11-ケトテストステロンがセルトリ細胞およびライディッヒ細胞中のFsh受容体遺伝子および11β-水酸基脱水素酵素タイプ2遺伝子の発現を増加させることが明らかになった。加えて、Lhがライディッヒ細胞におけるLh受容体遺伝子、ステロイド産生急性調節因子遺伝子、ステロイド側鎖切断酵素遺伝子、17α-水酸化酵素/C17-20側鎖切断酵素遺伝子、11β-水酸化酵素遺伝子の発現を増加させることが示された。 さらに、次世代シーケンサーを用いたRNA-seq解析により、各ホルモンを添加し培養したセルトリ細胞の遺伝子発現を網羅的に解明した。今後、得られた遺伝子発現情報をもとにさらに詳細に精子形成制御機構を明らかにする予定である。
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