研究課題/領域番号 |
17K07955
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研究機関 | 北海道大学 |
研究代表者 |
齋藤 陽子 北海道大学, 農学研究院, 講師 (30520796)
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研究期間 (年度) |
2017-04-01 – 2021-03-31
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キーワード | 遺伝資源 / ジーンバンク / 品種改良 / 研究開発投資 / End Point Royalty / 育成者権 / 公共財 / 民間参入 |
研究実績の概要 |
本研究期間における研究概要は以下の通りである。 ① 遺伝資源と品種改良成果:育種家が直面する遺伝資源が多様であるほど目標とする品種改良成果に早く到達できる、より効率的に到達できる事が分かった。ただし、ジーンバンクへの新規導入数は年々減少しており、近年では、生物多様性条約の影響もあり、ゼロ(小麦の場合)の場合も多い。今後、育種家が利用できるジーンバンクの多様性が大きく拡大することは難しいことから、新しい育種技術の利用なども求められる。 ②育種制度と知的財産権:オーストラリアやフランスなど小麦輸出国を中心に新しい知的財産制度が導入されている。End Point Royalty(以下、EPR)と呼ばれるこの制度は、新しい育種資金や民間の参入に繋がっている。オーストラリアで育種家に聞き取り調査を実施した結果、育種家は農家の需要が減少している品種については、育成者権を満了する前に放棄する場合も多いことがわかり、こうした育種家の意思決定は生産者需要を反映することが分かった。そこで、育成者権データに生存分析を当てはめ、EPRの効果を実証的に明らかにした。EPRが導入されたことで、育成者権の維持が長期化したことから、EPR開始後の品種は、生産者の需要に対応した品種となるなど、育種成果が改善したといえる。 ③EPRと種子市場:EPRは民間育種の参入を促すが、その場合に懸念される事項として、市場が寡占または独占になることで、種子価格が上昇することがある。そこで、EUの育成者権データを使い、EPRの導入で市場規模が拡大しているのか、グラビティモデルによって分析した。その結果、EPRを導入したフランス、イギリスは登録先数を拡大するなど、市場を拡大する傾向にあったが、フランスとイギリスでは、フランスの登録先数の増加が大きいことから、EPR制度によっても差が生じることが分かった。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
年度末に予定されていた学会が延期となったため、予定していた学会報告が出来ずに、改めて報告の機会を持つため、研究期間を延長している。
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今後の研究の推進方策 |
研究概要で説明した通り、分析はほぼ終えていることから、研究発表や論文投稿へと進めていく。また、次の研究課題に向けて、近年EPRの導入を検討しているカナダを対象に、育成者権データの入手やアメリカの制度に関する議論や既存研究を整理していく
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次年度使用額が生じた理由 |
新型コロナによる移動自粛により、日本農業経済学会が延期(その後中止)となり、予定していた出張旅費を繰り越すこととしました。
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