日本農業が国内で厳しい状況を迎える中、海外展開に関心を持つ経営が存在し、条件次第では今後一層拡大していく可能性がある。海外展開をはかるこうした農業法人が現地での経営に成功するためには、適切な経営管理を行うことのできる優秀な人材をいかに確保・育成できるか、その人材マネジメントが極めて重要な課題となっている。本研究では、海外において適切に経営管理を行うことのできる人材を育成していくためにはどのような取り組みが有効なのかを実証的に分析し、体系化に向けた改善方向と課題について検討することを目的とする。今年度は、これまで日系農企業の現地調査を進めてきたベトナムにおいて、日系農企業のマネジャー及び従業員に対して継続的な調査を行った。また、比較分析のため、ベトナムに進出している他国の農企業を対象にその人的資源管理の特徴と従業員側の評価に関する調査を実施した。その結果、A国の農企業では日系農企業と同様に、マネジャーと従業員の信頼関係を深めるために日常的な交流の場作りに努めるなど福利厚生面についての就業条件作りが行われていた。さらに、勤務時間管理において、従業員の遅刻や休業などを未然に防ぐ取り組みが行われていた。A国のベトナム進出企業は、業種の垣根を越えて情報交換を行う場を設けており、従業員管理に関するノウハウ等もこうした場で共有される傾向にあった。これらのことが、A国農企業の従業員管理の質の向上に大きく貢献しているものと考えられた。
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