研究課題/領域番号 |
17K07963
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研究機関 | 横浜国立大学 |
研究代表者 |
田代 洋一 横浜国立大学, 大学院国際社会科学研究院, 名誉教授 (00092651)
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研究期間 (年度) |
2017-04-01 – 2020-03-31
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キーワード | 農業協同組合 / 農協法 / 1県1農協化 / 単協 |
研究実績の概要 |
今年度は6JA(つがる弘前、いわて花巻、山形おきたま、会津よつば、あつぎ、いせはら)、6JA中央会(福井、神奈川、山梨、岐阜、滋賀、大分)においてヒアリングし、テーマを含む農協の状況について有益な知見を得た。また、内モンゴル大学の研究者と内モンゴルにおける畜産農協の可能性について研究・調査を行い、国内では関連して集落営農法人の調査を島根県において実施した。 剰余金処分の大宗を占める出資配当の利率については、東日本は概ね1%、東日本でも農業のウエイトの高いJAでは2%、都市農協は3%、西日本は概ね1%水準にあるといえる。なかにはJA山形おきたまのように出資配当をゼロに据え置いて経営再建に邁進しているJAもある。また事業利用分量配当については概ね農業への注力度の高い産地農協と、信用事業収益の多い都市農協(金利上乗せ)が行う傾向にある。いくつかの農協は出資配当から事業利用分量配当へのシフトを摸索している。准組合員が過半を占めるに至る中で、その出資も増え、また准組合員は信用事業・共済事業の利用高が多いことから、剰余金処分は収益を誰に配分するかの戦略を抱えることになるが、その問題は表面化していない。 農協が支援してきた集落営農法人についても、西日本中山間地域のそれは規模が小さく持続性が問われており、その実態を調査し、農協支援のあり方を研究した。20ha以上の小規模法人体でも若手農業者の雇用がみられるが、経営的に厳しく、また連合体として新たな法人を設立する動きがみられるが、連合体が小規模法人のかかえるマネジャーやオペレーター不足の直接の補完要因にはなりえず、農協の支援政策の模索が必要である。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
これまでの研究は概ね順調に進展しており、本年度半ばには、とりあえずこれまでの本研究の成果を『農協改革と平成合併』の一書に取りまとめ、そのなかで事例としてとりあげた合併農協(JA香川県、JAなら、JA沖縄、JA島根、JAしまね、以上は1県1JA、いわて花巻、JAながの、JAふくしま未来、JA会津よつば、JA福島さくら、JAながの、JA山形おきたま)における剰余金処分方針をテーマの一つとして検討し、概ね地域性や事業特性に応じた傾向を析出することができた。 2018年度のヒアリング対象は東日本に集中したので、最終年度は西日本にも力点を置きたい。 しかしながら、農林中金が2019年度より4年間かけて奨励金を0.6%から、0.1~0.2ポイント落とすことが明らかとなり、各JAとも経営見通しを立てることに苦慮している。これまでの信用共済事業に収益を依存した農協の経営モデルの根本的な転換が求められ、剰余金処分のあり方や水準も当然に問われることになる。
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今後の研究の推進方策 |
農協経営が根本的な転換を求められることになり、本研究のテーマに関しては、各農協がJA各県大会をふまえて、いかなる中期3か年計画をたて、そのなかで剰余金処分のあり方に関していかなる方針を打ち出すかの追求が必要になる。 農協としては、新たな状況下で、改めて農協の組織理念(准組員も含め誰をどう組織するか)、ビジネスモデル(信用・共済事業を主たる収益源とする事業モデル)をどう確立するかが問われており、剰余金処分のあり方は部分的なテーマとなる。 組織理念にかかわっては、准組合員の農協事業利用から得られた収益をどう配分・再投資するか、ビジネスモデルに係わっては、農協の広域合併とJAビジネスモデル転換という2つの方向の間の矛盾とその調整のあり方が問われる。解明ということになろう。 2018年度は東日本のヒアリング事例が多かったので、最終年度は西日本の事例へのアプローチに留意しつつ、既存の奨励金水準での剰余金処分のあり方についてとりまとめるとともに、以上の新しいテーマへのアプローチを摸索する。
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次年度使用額が生じた理由 |
主として旅費として使用したので端数を残すこととなった。次年度には旅費の一部として活用する。
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