本年度は,EUの共通市場の下で農協の国境を越えた合併が進んでおり、その典型であるArla Foods酪農協(本部デンマーク)について、条件不利農業国であるスウェーデン支店を訪れ,スウェーデンの側から農協ガバナンスの実態について調査した。酪農家組合員であり農協総代の方の話も聞けガバナンスの実情も聞け有意義な調査であった。その後、ブリュッセルに行き、EU農協の連合会であるCopa-Copa-Cogecaを訪れ、ヨーロッパ全体の農協合併に関する動向について調査し、また資料も入手できた。 また、今までに調査した内容、収集した文献、資料を検討し、「EU市場下における北欧農協の国境を越えた再編-スウェーデンから見て-」をまとめ、日本協同組合学会誌に論文として投稿し掲載された。 スウェーデン農協組織は国家制度と深く結びつき集中的な組織構造を保ってきたが,EU加盟を契機に再編され,酪農分野においては,7カ国に組合員を要する多国籍農協アーラ・フーズが出現し,食肉分野においてはフィンランドの食肉販売農協傘下の会社に吸収合併され、農協の国際化が進んでいる。アーラ・フーズでは国により言語や法経済制度だけでなく,乳価設定方法も異なっていた。1人1票制も,後参加国には出資金額を勘案するなど,ガバナンスは難しい問題を抱えている。 さらに、本科研費での成果も含め、北欧農協研究を一冊の本にまとめるための整理・検討、さらには『国境を越えた協同組合のガバナンス-多国籍Arla Foods酪農協の事例-」について補足執筆を行い、科研費成果公開促進費に「協同組合王国:北欧農協の形成・展開・再編」というタイトルで応募した。
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