本研究では,ライフサイクルアセスメント(LCA:Life Cycle Assessment)と包絡分析法(DEA:Data Envelopment Analysis)の統合手法を用いて,わが国における水稲栽培の環境効率スコアを計測した.一般に,環境効率は,製品またはサービスの価値/環境影響,という式で定義され,地球温暖化や富栄養化などの環境影響ごとに計算される.本研究において,LCAは環境効率の計測式における分母の値を計算するために用いられた.DEAは複数の環境影響を考慮に入れた単一の環境効率指標を作成するために用いられた.具体的な研究課題として,わが国の農業経営における水稲作付規模の拡大が環境効率向上に資するかどうかを調査した.各年度の研究状況を整理すると,以下の通りである.2017年度においては,まず分析用データセットを農林水産省の刊行統計資料から作成した.また,環境効率分析の事前分析として,DEAを用いた水稲栽培のエネルギー効率分析を実施した.エネルギー効率分析の研究成果は,2017年度中に英語論文として掲載された.2018年度においては,水稲栽培の環境効率分析で用いるために,地球温暖化や富栄養化などの複数の環境影響項目をLCAを用いて定量化した.さらに,DEAを用いて,複数の環境影響を統合した水稲栽培の環境効率分析を行った.環境効率分析の研究成果は,2018年度中に国内学会で口頭発表を行い,英語論文として投稿する準備を進めた.2019年度においては,前年度に学会発表した内容を英語論文として取りまとめて投稿し,掲載に至った.
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