研究課題/領域番号 |
17K07972
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研究機関 | 福島大学 |
研究代表者 |
高山 太輔 福島大学, 食農学類, 准教授 (50612743)
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研究期間 (年度) |
2017-04-01 – 2021-03-31
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キーワード | 農地改革 / 投資 |
研究実績の概要 |
令和1年度は、平成29年度に作成した『米生産費に関する調査』個票パネルデータ(昭和11年~昭和20年、昭和22年、昭和23年の延べ12年間、稲作農家8,333戸)を利用し、農地改革による自作地率の増加が稲作農家の投資行動に与えた影響について分析を行った。具体的には、農地改革実施期間の小作農家や自小作農家のサンプルを使用し、農地改革実施による自作地率の変化のヴァリエーションを利用したDIffrence-in-Differences method (差分の差推定法)により農地改革による稲作農家の投資行動(有機肥料)への影響を推定した。分析の結果、農地改革による自作地率の増加と投資の間に、統計的に有意な関係をみつけることはできなかった。 また、以下のロバストネスチェックを行った。第一に、農地改革の影響を受けない3ha未満の自作農家を対照群として、処置群の農家の投資行動と比較した。第二に、処置群のサンプルを農地改革実施前時点における小作農に限定して分析を行った。第三に、戦前のデータを用いて、小作農や自作農の要素投入を比較した。これらの方法に対して、自作地率の増加と投資行動の関係は頑健であった。 なお、これまでの成果を海外の学術雑誌に投稿した。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
3: やや遅れている
理由
期間中に所属機関の異動があり、その際に機器等の移管ができなかった。そのため、研究費移管後に機器を買い直したため研究が遅れた。
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今後の研究の推進方策 |
最終年度は、これまでの研究結果をまとめ、農地改革の経済的評価の論文を発表・投稿する。また、構築したデータセットを用いて、戦時体制に対する農家の対処行動を明らかにする。具体的には、戦時体制下の長男や戸主の農業労働力流出や1940年の米穀管理規則による生産者米価の上昇に対する農家の対処行動について、要素投入や土地利用の変化に着目する。農家家計は、このような外生的なショックに対して、肥料などの経常財投入や雇用労働力の調整、農業労働力の増加をはかることで、対処していたことが推察される。さらに、外生的ショックは農家家計の経常財投入や労働供給の変化を引き起こすだけでなく、作付け体系を多様化させることによりリスクを軽減していた可能性も考えられる。そこで、耕地面積、雇用労働力、肥料投入費用をアウトカムとして、戦時体制に対する農家家計の対処行動を計量分析により明らかにする。
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次年度使用額が生じた理由 |
期間中に所属機関の異動があり、研究が計画的に行えず、補助事業期間延長を行ったためである。次年度は、研究成果発表のための学会参加費等として使用する予定である。
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