令和2年度は、農地改革が現代の農業構造に与える影響について分析した。具体的には、2000年時点における農家レベルの農産物の販売金額および経営耕地面積と農地改革実施直後の市町村レベルの自作地率との関係を回帰分析により明らかにした。分析に使用したデータは、農地等開放実績調査と農林業センサス個票データおよび集落カードである。これらのデータを旧市町村コードに従いリンケージさせ、データセットを作成した。なお、データの制約により北陸地方のみを分析対象とした。 分析の結果、以下のことがわかった。第一に、農地改革直後の1950年時点で自作地率が高い市町村の農家ほど、2000年時点において、営耕地面積が大きいだけでなく、1haあたりの農業生産額が高いことがわかった。第二に、1950年時点で自作地率が高い市町村の集落ほど、賃貸借規制の緩和が行われた1970年の農地法改正以降、1農家あたりの経営耕地面積が大きくなっていることがわかった。これらの結果を説明する要因として以下の点があげられる。第一に、農地改革直後の1950年時点で自作地率が高い市町村の集落ほど、1990年および2000年時点において、圃場整備率が高いこと、第二に、1950年時点で自作地率が高い市町村の集落ほど、賃貸借規制の緩和が行われた1970年の農地法改正以降、農地の流動化が進み、3ha以上の経営耕地面積を持つ農家の割合が増えていること、である。以上より、農地改革による小作農への農地の所有権の移転は、現代の農業構造に影響を及ぼしていることがわかった。今後は、これらの研究成果をまとめて、海外の英文ジャーナルに投稿する予定である。
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