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2017 年度 実施状況報告書

ロシアにおける日本産農水産物・加工食品の海外販路拡大に関する実証的分析

研究課題

研究課題/領域番号 17K07973
研究機関共栄大学

研究代表者

中村 哲也  共栄大学, 国際経営学部, 教授 (80364876)

研究分担者 矢野 佑樹  千葉大学, 大学院園芸学研究科, 講師 (40618485)
丸山 敦史  千葉大学, 大学院園芸学研究科, 准教授 (90292672)
研究期間 (年度) 2017-04-01 – 2020-03-31
キーワード日露友好 / ロシア / 輸出販路拡大 / 食の安全・安心 / GGAP / JGAP / EAC / 植物工場
研究実績の概要

本研究ではロシアにおける食の安全・安心、及び健康志向の現状を把握した上で、日本産を普及するため必要な調査項目を検討した上で調査票を作成し、調査会社のモニターに対してWeb調査を実施した。平成29年度は、ロシアにおける食の安全・安心、及び健康志向の現状を考察した結果、ロシアにおける輸入農産物の国際認証と信頼性に関する分析を実施した。
まず,国際認証を受けた農産物を信頼する階層はどの階層なのか,統計的な差異を推計するために順序ロジット分析を推計した結果,GGAP取得農産物は,所得が高い者に信頼された。また,JGAP取得農産物は,男性や年齢が高い者,子供がいる者,所得が高い者に信頼された。ただし,沿ヴォルガ連邦管区の人々は,JGAP取得農産物を信頼していなかった。
次に,GGAPの国際認証を受けた中国産とJGAPの認証を受けた日本産に関して多項ロジット分析を推計した結果,GGAP認証を受けた中国産を信頼する者は,年齢が低いが,所得が高い者であった。他方,JGAP認証を受けた日本産を信頼する者は,所得が高い者であった。次に,GGAP認証を受けた中国産と国際認証を受けなかった日本産に関して推計した結果,GGAP認証を受けた中国産は,女性や年齢が若い者,ASF(アフリカ豚コレラ)に汚染された南部連邦管区の者,閉鎖都市ノリリスクがあるシベリア連邦管区の者が信頼していた。他方,国際認証を受けなかった日本産は,チェルノブイリ原発の放射性物質の汚染地域が集中する中央連邦管区の者,南部連邦管区の者,沿ヴォルガ連邦管区の者が信頼していなかった。以上,ロシアへ日本産を輸出する際,日本産が国際認証を取得していない場合は,汚染地域が集中する都市の住民には信頼されないことが明らかにされた。ただし,JGAP認証を受けた場合,ロシア人は日本産を信頼し,同認証にはJAPANブランド効果がみられた。

現在までの達成度 (区分)
現在までの達成度 (区分)

1: 当初の計画以上に進展している

理由

平成29年度、第1に福島第一原発事故後の果樹購入時の選択行動や食品の放射性物質の規制値の検査制度の評価や情報公開の信頼性を検討してきた。検討していく過程で、ロシア人は、食の安全性に高い関心を持ち、かつ自国の農産物に高い信頼を持っていることが明らかにされた。また、コメや醤油などの寿司関連商品はかなり需要が高く、価格に対しても有意性があることが明らかにされた。我々が計画していた以上に研究は進んでいる。また、ロシア人は、自国の農産物に関して、衛生、残留農薬、異物混入には高い信頼性を持っていた。また、ロシアはチェルノブイリ原発事故を経験し、汚染地域も広がっているが、自国の食品内の放射性物質に関しては、EU産や日本産以上に信頼していた。ロシア人が食品内の放射性物質の管理に対し、高い信頼性を持っているのは、旧ソ連のチェルノブイリ法がロシア連邦においても継続して施行されていることが大きいと思われる。チェルノブイリ法は、社会保障や医療提供などに加えて、農業の安全対策(放射性物質の食物移行防止)や放射能汚染検査(自治体・産業別の放射性物質汚染検査の実施)など、厳格に明記されている。チェルノブイリ法の効果によって、自国の農産物は日本人が想像している以上に信頼され、国産が重視されていた。対して、ロシア人は、中国産農産物については、衛生、残留農薬、異物混入だけではなく、放射性物質についても信頼していなかった。EU産の輸出停止措置が続き、中国産の輸入が急増しているが、ロシア人は中国産を信頼していなかった。これまでの科研成果で、日本産は高価格であるため、嫌煙されていた国も多かったが、ロシアでは価格の勝負が可能であることに加え、1パック900円という高価格イチゴの需要があることもわかった。

今後の研究の推進方策

ロシア向け輸出計画では、食品・加工品や高級果樹、そして植物工場プラントの輸出を推進することが期待された。平成29年度の調査によると、ロシア人は国産に対する愛着が非常に強く、自国の農産物を信頼していた。日本産は衛生、残留農薬、異物混入に関してはEU産より信頼されているが、食品内の放射性物質汚染に関してはEU産より評価が低かった。そのため、平成30年度は、ロシア国内における日本産の放射性物質汚染に関する信頼性を回復するための研究を実施する。また、ロシアやベラルーシ、ウクライナ等の旧ソ連では、チェルノブイリ法に基づいて食品が管理されているが、チェルノブイリ法を市民はどのように評価し、食品内の放射性物質検査をどのように実施すれば、日本産の信頼が回復するのか、ロシアとベラルーシの2か国を比較し、調査分析する。
更に、平成30年度は、平成29年度からの植物工場野菜の需要に関する消費者調査を継続しつつ、植物工場プラント輸出の展望についても検討する。極東ロシアでは日本が主導する完全制御型植物工場の輸出を目指しているが、平成29年度はロシア人に対して植物工場野菜の印象についてネット調査したうえで、共起ネットワーク分析を実施した。その結果、植物工場野菜について好む者は味が良い、安全、清潔等の評価が高く、幾分好む者は味が良い、安全、新鮮、健康、面白い等と評価した。あまり好まない者は科学的、健康でない、味が悪い、好まない者は自然でない、危険、硝酸、ビタミン不足等と評価した。ロシア国内でも、植物工場の評価は分かれているが、ロシアでは日照時間が多い地域と少ない地域に分かれている。ロシアは国土面積が工大であるため、完全制御型と太陽光利用型植物工場の輸出を望む地域に分かれるだろう。2つの植物工場には、長所と短所があり、どの地域で、どのような階層のロシア人がどの植物工場を選択するのか、調査分析する。

次年度使用額が生じた理由

平成29年度、中村が48,362円、矢野が71,724円、合計120,086円使用額が少なかった。年度末にウラジオストクへ行くはずであったが、諸事情により、渡航しなかった。そのため、平成30年度にロシアへ渡航したいと考え、研究費を繰り越した。

  • 研究成果

    (21件)

すべて 2018 2017

すべて 雑誌論文 (10件) (うち査読あり 4件) 学会発表 (10件) 図書 (1件)

  • [雑誌論文] 東日本大震災後の日本産果実輸出の現況と輸出拡大へ向けての提言2018

    • 著者名/発表者名
      中村哲也
    • 雑誌名

      農耕と園芸

      巻: 第73巻第5号 ページ: 20-27

  • [雑誌論文] 放射能汚染がエネルギー及び魚介類の選択行動にもたらす影響-アメリカ北東部を事例として-2018

    • 著者名/発表者名
      中村哲也・矢野佑樹・丸山敦史
    • 雑誌名

      開発学研究

      巻: 第29巻第1号 ページ: 40-55

    • 査読あり
  • [雑誌論文] 政府の食品及びエネルギーの安全情報の信頼性に関する意識調査 -フィンランドを事例として-2018

    • 著者名/発表者名
      中村哲也・矢野佑樹・丸山敦史
    • 雑誌名

      開発学研究

      巻: 第29巻第1号 ページ: 印刷中

    • 査読あり
  • [雑誌論文] 中琉貿易がもたらした食文化〔1〕中国のナマコやアワビ,フカヒレ及び昆布,沖縄のさんぴん茶2018

    • 著者名/発表者名
      中村哲也
    • 雑誌名

      農業及び園芸

      巻: 第93巻第1号 ページ: 75-89

  • [雑誌論文] パインアップルの来歴〔7〕パインアップル繊維の利用―台湾での衰退とフィリピン・ピーニャの再興―2018

    • 著者名/発表者名
      中村哲也
    • 雑誌名

      農業及び園芸

      巻: 第93巻第3号 ページ: 231-249

  • [雑誌論文] 食品内の放射性物質から子供を守る安全対策に関する分析2017

    • 著者名/発表者名
      中村哲也・丸山敦史
    • 雑誌名

      開発学研究

      巻: 第27巻第3号 ページ: 2-14

    • 査読あり
  • [雑誌論文] パイナップルパークへ訪問する中国人観光客の顧客特性と購買行動-訪沖客への対面調査からの接近-2017

    • 著者名/発表者名
      中村哲也・丸山敦史・陳志キン
    • 雑誌名

      開発学研究

      巻: 第28巻第1号 ページ: 33-44

    • 査読あり
  • [雑誌論文] パインアップルの来歴〔5〕沖縄パインアップルの育成と品種の変遷2017

    • 著者名/発表者名
      中村哲也
    • 雑誌名

      農業及び園芸

      巻: 第92巻第1号 ページ: 46-66

  • [雑誌論文] 果樹輸出の現状と展望―欧州のリンゴ購買選択行動を事例として―2017

    • 著者名/発表者名
      中村哲也
    • 雑誌名

      農業及び園芸

      巻: 第92巻第4号 ページ: 284-319

  • [雑誌論文] パインアップルの来歴〔6〕世界のパインアップル貿易と日本2017

    • 著者名/発表者名
      中村哲也
    • 雑誌名

      農業及び園芸

      巻: 第92巻第7号 ページ: 604-629

  • [学会発表] ロシアにおける輸入農産物の国際認証と信頼性に関する分析-日本産輸出を考慮して-2018

    • 著者名/発表者名
      中村哲也・矢野佑樹・丸山敦史・石塚哉史
    • 学会等名
      日本国際地域開発学会
  • [学会発表] Consumer perceptions and overall rating for vegetables grown under artificial lighting in Russia2018

    • 著者名/発表者名
      矢野佑樹・中村哲也・丸山敦史・石塚哉史
    • 学会等名
      日本国際地域開発学会
  • [学会発表] 政府の食品及びエネルギーの安全情報に関する分析-フィンランドを事例として-2017

    • 著者名/発表者名
      中村哲也・矢野佑樹・丸山敦史
    • 学会等名
      日本国際地域開発学会
  • [学会発表] 食品内の放射性物質安全対策に関する分析-ウクライナを事例として-2017

    • 著者名/発表者名
      中村哲也・矢野佑樹・丸山敦史
    • 学会等名
      日本フードシステム学会
  • [学会発表] チャット形式の調査による農産物に対する消費者ニーズの解明2017

    • 著者名/発表者名
      矢野佑樹・中村哲也・丸山敦史
    • 学会等名
      地域農林経済学会
  • [学会発表] 台湾における日本産リンゴの消費選好分析2017

    • 著者名/発表者名
      中村哲也・陳志キン・丸山敦史・矢野佑樹
    • 学会等名
      日本農業市場学会
  • [学会発表] 厦門市民の環境及び食の安全性に関する意識調査-若者の意識調査を中心に-2017

    • 著者名/発表者名
      中村哲也・陳志キン・丸山敦史
    • 学会等名
      地域農林経済学会
  • [学会発表] 植物由来の化粧品に対する消費者知覚-和梨の剪定枝有効活用に向けて-2017

    • 著者名/発表者名
      矢野佑樹・加藤恵里・大江靖雄
    • 学会等名
      地域農林経済学会
  • [学会発表] 香港市民の安全意識と食料購買選択行動の関連性2017

    • 著者名/発表者名
      中村哲也・陳志キン・丸山敦史
    • 学会等名
      日本国際地域開発学会
  • [学会発表] 香港における日本産シャインマスカットの消費者選好分析-香港Food Expo 2017における食味官能試験からの接近-2017

    • 著者名/発表者名
      濱島敦博・中村哲也
    • 学会等名
      日本国際地域開発学会
  • [図書] A Multi-Industrial Linkages Approach to Cluster Building in East Asia: Targeting the Agriculture, Food, and Tourism Industry2017

    • 著者名/発表者名
      Kuchiki, Akifumi, Mizobe, Tetsuo, Gokan, Toshitaka (Eds.)
    • 総ページ数
      295
    • 出版者
      Palgrave Macmillan UK
    • ISBN
      978-1-137-57128-1

URL: 

公開日: 2018-12-17  

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