インターネット調査による消費者リサーチについて、東日本大震災の発災後、福島県で新たに進んでいる農産物や加工品の取り組み(ブロッコリー、ナタネ油、ワイン醸造)についての評価を明らかにし、また、福島県産という産地表示について、産地選択行動を、隣接する産地、遠隔の産地との比較によって表明選好モデルを用いて分析した。さらに、発災後の時間の経過を踏まえ、震災に関する調査であることを回答者に意識させることの効果についても分析した。 新たな取り組みについては、その商品としての属性や特徴に基づく差があること、なかでも農産物に対するニーズの存在、加工品については安全性の不安が低い傾向にあることが明らかになった。 産地選択行動については、福島県産が他産地に比べて選択されない傾向にあるが、消費者の異質性を考慮したモデルにおいては、福島県居住者について特に評価に幅があること、個人特性においては、性別や年齢について福島県産が選ばれない傾向にあることが明らかになった。 震災について回答者が意識することの影響については、おいしさ、安さ、安全性の3つの属性について、震災に関する調査であることを意識すると、安全性の重要度が相対的に高まることが明らかになった。 これらの分析結果は、現地での取り組み主体にとっても有用なものであり、広く研究成果を共有するため、研究成果を取りまとめた冊子を刊行した。冊子の刊行にあたり、研究成果と併せて関係者のインタビューを掲載した。関係者のインタビューは広く行っているが、冊子に掲載したのは、避難経験のある農業者、福島県産品の販売者、ワイン醸造者である。このうち、ワイン醸造者については、インターネット調査の時点では本格的な販売に至っていなかったため、その補遺の意図である。
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