最終年度である平成31年度(令和元年度)は、前年度までの分析により明らかになった点、不明な部分を整理し、補足調査を実施し、最終的に和牛繁殖経営における担い手構造再編のための条件を整理した。特に小規模繁殖経営の再編を促す組織としてキャトルブリーディングステーション(CBS)の果たす役割やCBS設置先進地における地域環境の整理を行った。キャトルブリーディングステーションは和牛繁殖経営のみならず酪農経営における受精卵移植を促進するサポート事業体であり、地域の特性によってそのサービス事業にも大きな差があり、和牛繁殖産地の存続を強く意識したCBS(長崎県壱岐市、島根県雲南市等)と地域の酪農、肉用牛を含めた地域畜産の維持拡大を目指したCBS(熊本県菊池市)があることが明らかになった。また今後のCBS設置に関わる注意事項としては、以下の点が明らかになった。CBSには共通の課題として農家の変容によるサポート事業多様化への対応の難しさ、子牛の哺育段階からの預託に伴うリスクの増大、地域畜産の現状維持と成長のための資源配分の難しさがあることが明らかになった。また、今後、CBSを設置していく場合、上記の課題を踏まえ、既存の資源を活用しながら、地域畜産の短期ならびに中長期的視点にたった施設設計、子牛の哺育技術の人材、施設両面での充実、地域畜産発展のため、従来の地域概念を超えた施設設計の視点も重要である点を指摘した。 これらのサポート事業の概要ならびに発展のプロセスはその他の農業分野の担い手構造再編にも有効な情報提供につながるものと思われる。
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