研究課題/領域番号 |
17K07977
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研究機関 | 法政大学 |
研究代表者 |
西澤 栄一郎 法政大学, 比較経済研究所, 教授 (30328900)
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研究分担者 |
市田 知子 明治大学, 農学部, 教授 (00356304)
田中 勝也 滋賀大学, 環境総合研究センター, 教授 (20397938)
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研究期間 (年度) |
2017-04-01 – 2020-03-31
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キーワード | 農業環境政策 / 生物多様性 / コンジョイント分析 |
研究実績の概要 |
本研究では、日本において実施可能で、日本に適した、生物多様性保全を主眼とする結果に基づく環境支払いの制度設計を行うことを目的とする。 環境支払いとは、農業者が何らかの形で環境に配慮する場合、政府が金銭を支払う仕組みである。結果に基づく支払いは、教育、保健など幅広い分野で推奨されており、農業分野では導入事例は少ないものの、欧州では従来型の環境支払いの欠点を補うものとして注目されている。一般的な環境支払いは、所定の環境保全的行為を採用することが支払要件であるのに対し、結果に基づく支払いの支払要件は行為ではなく結果(目標の達成)である点が従来のものとは異なる。結果に基づく支払いは、目標を達成した場合にのみ支払われること、また、特定の行為に限定しないので目標達成のための手段を農業者が自ら選択できることから、費用効率性の向上が期待できる。さらに、農業者が結果を出そうと環境保全に主体的に取り組むようになる、近隣の農業者や自然保護団体との協力が進み、社会的共通資本(ソーシャルキャピタル)の形成に資するという指摘もある。他方、天候などの外的要因で目標が達成できない場合に、支払いが行われず、そのリスクを農業者が負うというデメリットがある。 具体的には、農業者に対して質問紙調査を実施する。この調査において選択実験を行い、農業者の受容度が結果に基づく支払いと、従来型の仕組み(行為に基づく支払い)とで異なっているかどうかを分析するとともに、農業者の環境支払いに関する受取意思額を推計する。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
2018年度は栃木県で農業者に対する質問紙調査を実施した。この中で選択実験に必要な質問項目を入れた。仮想的な環境支払いとして、アカトンボの保全に対する支払いプログラムを設定し、プログラムへの参加の可否を尋ねた。指標種としてアカトンボを選んだ理由は、水田内で羽化すること、1990年代以降個体数の減少が報告されていること、稲作にとって害虫を食べる益虫であること、などである。 また、2019年3月に「生物多様性のための農業環境支払い国際シンポジウム」を2日にわたって開催した。2日目には結果に基づく環境支払いについて取り上げ、理論的解説やヨーロッパの事例の紹介、本課題で進めている実証分析の報告などを行った。
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今後の研究の推進方策 |
2018年度に行った質問紙調査では標本数が不十分なため、継続して調査する。結果を学会等で報告する。
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次年度使用額が生じた理由 |
出張が予定していた回数を下回ったことと、調査地を滋賀県から栃木県に変更したことから、旅費の支出が減少した。2019年度は予定通りの出張を計画している。
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