研究課題/領域番号 |
17K07980
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研究機関 | 龍谷大学 |
研究代表者 |
淡路 和則 龍谷大学, 農学部, 教授 (90201904)
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研究期間 (年度) |
2017-04-01 – 2021-03-31
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キーワード | 食品リサイクル / エコフィード / 食の安全・安心 / 畜産物の高付加価値化 / 家畜衛生 / 防疫 / 食品残さ |
研究実績の概要 |
国内におけるCSF(豚コレラ)および海外におけるASF(アフリカ豚コレラ)の感染拡大により養豚関係の調査が困難となったが、この状況下においてエコフィードを取り巻く法的制度がどのように変化するのかを分析した。CSFおよびASF対策でエコフィード原料の加熱処理基準の強化をめぐる施策形成過程に着目し、飼料業者等および関係団体へのヒアリングを行った。その結果、以下の諸点が指摘できた。OIE等国際基準を適用した加熱処理基準の強化について、①対象が、わが国では生肉が含まれるか否かの現物主義から、肉を扱う事業所等という排出者主義となった。②規制対象がOIE基準では調理屑等の厨房残さであるswillが対象であるが、わが国では製造副産物、加工くずや余剰食品までも範囲となり得るために対象が拡大化する。③現有の機械施設では処理基準を満たせない飼料化業者が少なくなく、エコフィード供給力を低下させる恐れがある。さらに、用語の問題として、CSFの原因や規制の表記に「食品残さ」「エコフィード」の広域の概念を示す用語が使用されることによって、エコフィード全体にリスクが高い印象を与える問題が指摘できた。防疫は生産基盤に関わることから、極めて強いフィルターになることが明らかとなった。 消費者意識についてのアンケートをCSFが多発した愛知県において20人を対象に試行した結果、CSFに関わる不安よりも食品製造副産物や余剰食品の飼料利用によって高付加価値の畜産物が供給されるメリットの方が大きいことが示唆された。このことより、フードシステムの川上で防疫上の観点からエコフィードに対して強い措置がとられる一方で、川下ではエコフィードによる畜産物の高付加価値化が望まれるという「ねじれ」をみることができた。エコフィードに対する社会的フィルターをフードシステムの川上、川中、川下の各段階に分けて相互分析する必要が認識できた。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
CSF(豚コレラ)の発生・蔓延により、長期間にわたり養豚関係の調査が実施できず、エコフィードの利用と畜産物の高付加価値をトレースすることができなかった。 また、新型コロナ感染症蔓延の影響によって一部調査が未実施となった。 人畜にわたる感染症の拡大で研究が計画通りに進まなかったが、CSFを逆手にとって、防疫観点からの法制度の決定プロセスを追うことができた。
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今後の研究の推進方策 |
エコフィードの利用と畜産物の高付加価値化についての調査研究を実施する。また、海外の事例を含めて、食品リサイクル推進と防疫および食の安全・安心のジレンマについて分析を行う。その際に、エコフィード、食品残さという用語の使用についての適性を検討する。 これまでの研究を総括して、経済的・社会的フィルターを明確化する。 以上の調査の実施を踏まえる研究については、新型コロナ感染症対策の解除がされてからの実施となる。
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次年度使用額が生じた理由 |
CSFの発生・拡大にともない、実施できない調査が複数あった。 配偶者の看病により実施を見送った調査が一部あった。 実施できなかった調査については、翌年の調査研究において実施する計画であり、次年度使用となった研究費をそれに充当する予定である。
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