研究課題/領域番号 |
17K07982
|
研究機関 | 秋田県立大学 |
研究代表者 |
上田 賢悦 秋田県立大学, 生物資源科学部, 准教授 (70611226)
|
研究分担者 |
清野 誠喜 新潟大学, 自然科学系, 教授 (90225095)
|
研究期間 (年度) |
2017-04-01 – 2021-03-31
|
キーワード | 普及指導員 / 農業普及 / 経験学習 / 熟達化 / 人材育成 / PAC分析 |
研究実績の概要 |
本研究の課題は,担い手の多様化に伴う新たな普及活動に適応可能な普及指導員を効率的・効果的に育成するために,イノベーションプロセスの変化という視点から「普及指導活動がどのように変化しているのか」,そこでは「普及指導員はどのように学び成長しているのか」という成長プロセスを解明し,普及指導員の人材育成方策を提起することを目的とするものである。 本年度はこれまでの2年間の研究結果を踏まえて,普及指導員の経験学習プロセスの分析を拡充するため,普及指導員の熟達化を対象とした調査を実施した。具体的には,自身の行動・判断・評価を方向づけたり,新しい経験の解釈を導いたりする等の重要な働きをすると考えられる「信念」と,その信念を形成する要素となる「メタ認知知識」に着目し,臨床心理学の手法であるPAC(Personal Attitude Construct)分析により中堅普及指導員の行動特性や心理特性を明らかにした。 組織や集団の個人育成機能としての組織的・文脈的要因(コンテクスト)という視点から分析を行うことで,対象者個人に留まらず,その対象者が属する集団や社会状況の影響を踏まえた普及指導員の熟達過程の全体像を把握することができ,入庁から中堅普及指導員に至るまでの様々な経験が,普及指導員としての信念や仕事観の形成や,維持・強化に影響を与えていることが分かった。 更には,上記の普及指導員を対象とした調査に加え,稲作依存度が高く青果物生産後進地域に所在する農業法人の青果物営業活動従事者を対象に,営業活動に取り組む“試行錯誤”の過程で生じる様々な経験やそこに見られる課題・営業上のポイントを,PAC分析を援用してその詳細を明らかにした。
|
現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
3: やや遅れている
理由
進捗状況を以下の点から評価した。 1点目は,普及指導員の熟達過程についての本調査を,仕事経験の蓄積によって自身の価値観・信念を自覚することによってアイデンティティの確立を図る時期にある中堅普及指導を対象に研究を進めることができた。 2点目に,普及指導員に加えて,農業法人の営業活動従事者を対象とした調査分析を進めることで,農業・農村における一体的な人材育成研究の展開を図るための基礎データを収集することができた。 3点目に,以上の研究成果を雑誌論文(2件)、学会発表(4件)で公表できた。 しかし,本研究では,都道府県普及事業主務課の協力を得ながら普及指導員に対面した現地調査が欠かせないが,新型コロナウイルスの感染拡大に伴い,これらの調査先との連携を中断せざるを得ない状況となっている。よって,研究期間を1年間延長することにより,これらの調査・分析を継続する必要が生じている。
|
今後の研究の推進方策 |
これまでの調査研究で、普及指導員の成長や学習について定性的な要因を析出することができたが,最終年度としてはこれを踏まえて普及指導員個々人へのアンケートを実施し、定量的な分析を行っていく。 さらに,分析結果を調査対象とした普及指導員,都道府県普及事業主務課等にフィードバックする作業を行い,整理された知見について議論し,それらの妥当性を確認する。また,研究全体の統括・取りまとめを行うともに,普及指導員の人材育成を進めるためのマネジメントのあり方について提言することで,研究成果の学術的な位置付けを図る。
|
次年度使用額が生じた理由 |
普及指導員の経験学習プロセスの分析の拡充するために,中堅普及指導員の熟達化を対象とした調査を新たに計画して本年度に実施した。そして,当初は本年度に予定していたアンケート調査を次年度に執り行うこととしたためである。また、ヒアリング調査で収集したデータの整理・分析を依頼するアルバイトを必要日数分確保できず,申請者自身による作業が増えたためである。 次年度は、複数の都道府県の普及指導員を対象としたアンケート調査を実施することで、役務費、人件費、等の支出を予定している。また、「最終年度の成果とりまとめ」に関する研究分担者との打ち合わせ,さらには学会等での成果発表,などの旅費経費を予定している。繰り越し予算も含め,最終年度における予算としては過不足なく使用できる予定である。
|