研究課題/領域番号 |
17K07989
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研究機関 | 新潟大学 |
研究代表者 |
木南 莉莉 新潟大学, 自然科学系, 教授 (40272132)
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研究期間 (年度) |
2017-04-01 – 2021-03-31
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キーワード | 都市農業の多面的機能 / クリエイティブクラス / 創造的思考 / ソーシャルビジネス / 社会関係資本 |
研究実績の概要 |
本研究は、農業経済学に立脚しつつ、地域研究、都市社会学、環境科学、認知科学、新制度派経済学及び組織論・起業論の分野における分析アプローチを相互補完的かつ融合的に用いて進められている。 東京都と上海市の住民に対する大規模なアンケート調査の結果に基づいて、以下の3つの仮説を検証した。いずれの都市においても、仮説1「都市農業の多面的機能はクリエイティブクラス(特に創造的思考を有する人々)を惹きつける」と仮説2「創造的思考を有する人々は高い水準の社会関係資本も有する」が検証された。さらに、それらの人々はソーシャル ビジネスに強い関心を持っていることが補足的に検証された。その一方で、仮説3「クリエイティブクラスは多様なライフスタイルを志向するため都市の持続的発展に寄与する」に対しては、東京都において検証されたが、上海市の分析結果からはクリエイティブクラスが一様に「自己実現」のライフスタイルを好んでいることが明らかになった。 そして、日本の政令指定都市(横浜市、千葉市、さいたま市、新潟市)を対象に実施したアンケート調査から概ね同様な検証結論が得られた。一方、これらの都市における農業関連の社会的事業のTEM分析結果からは以下の結論が得られた。まず、創造的思考を有し、高いレベルの社会関係資本を有する人々は都市農業の多面的機能を好み、ソーシャルビジネスに関心を示している。また、ソーシャルビジネスの発展は社会的制度→社会的起業家精神→社会的事業の好循環によって実現され、特に社会関係資本は社会的事業の設立の初期とビジネス発展の過程の双方において重要な役割を果たしている。本研究から引き出された政策含意は、地方政府が創造的思考を有する人々を惹きつけるために、社会関係資本の蓄積を改善し、社会的制度と社会的起業家精神及び社会的事業の間の好循環を生み出す機会を提供する必要があることを示唆している。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
研究成果が予想通り生み出されている。
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今後の研究の推進方策 |
次年度は一連の研究成果をまとめて英語版の単行本を出版する予定である。
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次年度使用額が生じた理由 |
一連の研究成果を纏めて英語の単行本を出版するための準備作業に使用する。
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