研究課題/領域番号 |
17K07994
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研究機関 | 日本大学 |
研究代表者 |
小野 洋 日本大学, 生物資源科学部, 准教授 (40446480)
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研究期間 (年度) |
2017-04-01 – 2020-03-31
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キーワード | キリバス / バイオマス / 水質悪化 / 野菜生産 |
研究実績の概要 |
本研究は、キリバスにおける再生可能エネルギーシステムの実効性評価を目的とする。前年度の研究結果から、経済環境のみならず生活環境の改善が現地での喫緊の課題であることが示された。本年度は、これらの諸点について、キリバス現地及び国内で調査を実施し、抱える問題を析出した。 キリバスは、ほぼ全土が石灰質土壌のため、土壌有機物の絶対量が不足している。また日射量が作物生産には過剰であるため、遮光が必要となる等、農業生産に適した土地は極めて限られている。食料は、野菜も含めほとんどが輸入に依存しており、キャベツ1玉が日本円で2,500円である等、食料価格は高い。以上の理由から、国民は慢性的な野菜不足状態にある。課題は、栄養改善のための低価格での野菜供給、すなわち国内での農業生産である。現在は、国交を有する台湾が野菜の技術指導・苗販売を行っている。トマトやナス、チャイニーズキャベツ等の生産が行われているが、いずれも家庭菜園+α程度である。生産物は自家消費や親族への譲渡、庭先販売が主であり、市場形成には至っていない。 石灰質土壌における農業生産のためには、土壌有機物の増加が不可欠である。こうした問題を解決するために、バイオマス資源の利活用が検討され、現地では昨年度から、市役所が中心となった堆肥化プロジェクトが開始された。これは街路樹等の剪定枝等に家畜ふんを混合し、発酵させ、堆肥として販売するものであり、我々も技術指導等で協力を行った。但し、堆肥価格は現地の物価に比して高価である。当面は、堆肥の安定的かつ安価での供給が求められている。 農業用水の調達可能性について島内14か所で水質調査を実施した。井水の多くはECが高く、日本の農業用水の基準を満たしていないことが明らかとなった。最終年度は、産業連関表の作成による再生可能エネルギーシステムの評価を実施し、あわせて、水質調査を継続する。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
キリバス現地において、統計データ収集及び水質調査並びに現地在住日本人等に対する生活実態に関するヒアリング調査を実施した。あわせて、降水量及び気温に関するデータ整備にも協力した。日本国内では、キリバス人出稼ぎにかかわる組織へのヒアリングを実施した。なお、本課題申請後に政権交代があり、現政権は環境保護よりも経済成長を重視する施策をとっている。このため、申請時に予定していた一部調査の実施が困難になっている。 本年度は、5月、12月、3月と学会報告を4回実施した(筆頭3,セカンド1)。また、次年度にむけて論文を現在執筆中である。以上から、研究はおおむね順調に進展している。
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今後の研究の推進方策 |
過去2年の調査から、研究計画時には予定していなかった諸問題が明らかとなった。具体的には水質汚染による、生活環境及び農業生産条件の悪化である。キリバス現地では、人員及び資材等の不足により、これまで十分に水質調査が行われてこなかった。 次年度は、本研究の当初目的である産業連関表の作成と経済効果の計測とあわせ、水質調査のサンプル数を確保することで、生活環境改善の可能性等についても評価・分析を行う。
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次年度使用額が生じた理由 |
年度末に関係者と研究進捗について打ち合わせを行う予定が、先方の体調不良のため当該出張が困難となったため、次年度使用額が生じた。未使用額は本年度の打ち合わせで使用する。
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