コロナ禍にあって昨年度は研究予算を使用せず、本年度に一年期間延長した。昨年度、これまでの実績を論文にとりまとめ投稿したが、データ不足を理由にリジェクトとなった。そのため本年度は、降水量等の気象データの計測、取得を目的に、キリバス現地と各種調整を行った。具体的には、現地に設置した装置の維持管理、更新作業の依頼をリモートで実施し、あわせて関係者に対し、現状の経済環境に関する調査を実施した。 また、ヒアリングを通じ、キリバス現地ではコロナ禍のもと、各種経済活動が停滞している。特に物資の輸出入の根幹をなす船便が、コロナ罹患による港湾作業員の不足や、世界的なコンテナ不足の影響により減便となっており、生鮮野菜の不足とこれによる低栄養状態が懸念されている点について知見を得た。 これまでの研究からは、降水量と地下水の質に逆相関があることが示されている。あわせて、首都部では人口増加が継続しており、これが地下水汚染を加速させ、農業用潅漑水としても不適切な水準にまで塩類集積が進行していることをデータから明らかにしてきた。この動きは、ラニーニャの発生頻度の高まりとも相関している。地球温暖化が、南太平洋環礁国の住民の生存に直結していることの証左でもある。 なお、最終年度であるにもかかわらず、コロナ禍にあって本年度も現地調査は不可となり、データ収集のための整備が中心となった。とりわけ、日本向け船便の長期にわたる停止により、データロガーの日本への輸送が年度内に不可となったため、論文投稿は次年度に行うこととした。
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