本研究では,農村のサスティナビリティを保持するため,とくに「レジリエンス」,「生業・生計」,「文化的景観」と農村空間構造の関連に注目して,有効な施策や対策を評価することを目的としている。令和元年度は,まず,長野県の小谷村を対象に,小谷村が検討している小さな拠点の形成により機能の集約化を行った場合を想定して,2050年までの100mメッシュ人口を単位に地理空間情報と関連づけて,道路距離による生活利便施設へのアクセス性の変化を調べた。その結果,小さな拠点の形成を図った場合,一部の地区を除き,全人口が各施設を利用できる距離が現在の半分程度になり,地区によるアクセス性の格差が改善されることがわかった。また,高齢者や子供に代表される交通弱者が,小谷村営バス路線を用いて,生活利便施設へと向かう場合のアクセス性を,バスを用いた所要時間とバスの本数から評価し,将来人口推計と共に検討を行った。その結果,自由乗降区間を設けることにより,より移動時間の短縮,アクセス性の向上が見込めることがわかった。さらに,小谷村での生活環境に関するアンケート調査結果を用いて,数量化理論Ⅱ類分析を行い,生活環境の向上に資する施策を把握した。その結果,ソーシャルキャピタルおよび買い物行動が暮らしの満足度に対して大きな影響力を持っていることがわかり,小谷村での暮らしの満足度に対する施策の提案が可能であった。次に,長野県の小谷村と白馬村を対象に,2014年11月22日に発生した長野県神城断層地震(白馬村で震度5強,小谷村で震度6弱を観測)に対する震災復興計画の評価を行うとともに,長野県の根羽村を対象に,山地酪農導入を主とした土地利用計画および台風19号の被災を契機とした,災害対応のための計画に関して検討と評価を行った。
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