研究課題/領域番号 |
17K08000
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研究機関 | 三重大学 |
研究代表者 |
岡島 賢治 三重大学, 生物資源学研究科, 准教授 (90466805)
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研究期間 (年度) |
2017-04-01 – 2020-03-31
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キーワード | 農地石垣 / 熊本地震 / 東紀州地域 / 斜面崩壊 / 豪雨災害 |
研究実績の概要 |
本研究は、中山間地の農地災害に関して、豪雨災害と地震災害を対象にその被災形態の分析や発災メカニズムの解明を目的としている。特に豪雨災害に関しては、気象ステーションを設置して研究期間内に気象データを収集し、豪雨災害の発生予測指標の提案を目指している。 平成30年度は、豪雨災害の観測対象地としている東紀州地域に新たに2箇所気象観測ステーションを設けた。一つは、東紀州地域で比較的高い長尾山の山頂で、もう一つは海岸に近い御浜町役場の屋上である。本年度の研究で東紀州地域の降雨形態と気象庁データの大気圧900hPa付近の高度の風向風速に関連があることが分かった。長尾山山頂は標高800m近くあり気圧が900hPaに比較的近いため、東紀州地域の降雨形態に相関が高い気象観測データの収集が期待できる。もう一か所の御浜町役場は海岸に近く、長尾山山頂と海岸付近という地域の指標となる気象観測ステーションを設置できたと考えている。 地震災害に関しては、熊本県熊本市の農地石垣の被災地点とGISによる地形解析を比較した。平成30年度は被災地点の標高・傾斜角度・傾斜方位について分析をした。この結果、標高200~250m、西向きの斜面での農地石垣の被災割合が高いことが明らかになった。さらに、明治時代に発生した明治熊本地震の災害集中地域との比較を行い、明治熊本地震の災害集中地域は平成の熊本地震においても被害が多いことが明らかとなった。また、この要因が地質の境界部と一致することを示した。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
平成30年度は、豪雨災害に対して、以下の予定を立てていた。平成29年度に設置した気象観測ステーションの1年分の観測情報を分析し,御浜町の降雨特性を検討する.特に,梅雨時期,台風期,その他の降雨と降雨形態別に風向風速の関係を明らかにしてそれぞれの降雨特性を把握することを目的とする.2地点の観測情報およびこれまで設置されている雨量計との比較を行い,降雨特性に影響を与える条件を整理検討する.これに対して、高層の900hPa付近の風向風速と東紀州地域の降雨形態に相関があることを明らかにした。 地震災害に対しては、斜面崩壊危険度評価手法「六甲式」を用いて,斜面崩壊の危険度評価結果と傾斜農地内の法面崩壊との関係を分析する予定を立てていた。しかし、近年、六甲式が各地震によってパラメータが異なるという報告がなされたため、地形特性から傾斜農地内の法面崩壊の予測をする方向へと研究方針を修正した。平成30年度は研究方針の修正に伴い、基本的な地形解析結果を分析し、一定の傾向を把握することができた。
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今後の研究の推進方策 |
令和元年の研究方針としては、以下の研究計画を立てている。豪雨災害について、観測情報を整理再検討し,観測地点ごとに降雨特性から傾斜農地の法面崩壊の発生予測手法を提案する.地震災害に関して、法面崩壊データの分析、FEM解析による崩壊メカニズムの解明である。 豪雨災害については、平成30年度に設置した気象観測ステーションに若干の不備が出ていることから、観測機器の設置位置の修正を行い、より精度の高い観測体制を整える予定である。また、平成30年度の西日本豪雨災害の被災地である愛媛県吉田町の災害に関して、地形解析などで災害発生リスクの高い地域を評価できる手法を検討する予定である。 地震災害に関しては、平成30年度に行った基本的な地形解析に加え、より多角的な地形解析結果と比較することで熊本県熊本市河内町の農地石垣の地震災害の発災リスクを指標化していきたいと考えている。また、平成30年度に発生した北海道胆振東部地震で被害を受けた農業用ダムのFEM解析を行い、被災メカニズムの解明に取り組む予定である。
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