研究課題/領域番号 |
17K08001
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研究機関 | 三重大学 |
研究代表者 |
伊藤 良栄 三重大学, 生物資源学研究科, 助教 (30232490)
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研究期間 (年度) |
2017-04-01 – 2020-03-31
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キーワード | 農業IoT / 水管理 / 自動給水栓 / 見える化 |
研究実績の概要 |
フロート式の自動給水栓が設置されている地区において,インターバルカメラを給水用の揚水機場に設置して稼働時間を記録した。1時間ごとの画像ファイルを読み取り,アメダスデータと比較することにより消費水量を推定することに成功した。このデータからこの地区における自動給水栓の節水効果は約50%であることが分かった。本来であれば降雨時に給水量が完全に0になるはずであるが,現地観測でフローとセンサ部を自動にせず開にしている圃場の割合が2割から3割程度あったこと,畦畔の崩壊や小動物が開けた穴を通じた漏水が主たる原因である。 この方法で推定される日あたりの消費水量は日々の変動が大きかったが,半旬毎の移動平均を取ることにより変動を抑えることができた。6月から9月までの水田の消費水量の時間変化を捉えることができ,中干前は約15mm/日であった圃場単位用水量が,中干後は約20mm/日に増加することも確認できた。 この手法は,旧来代表的な水田における浸透量を計測して地区全体の消費水量を推定する方法と異なり,積分値としての地区全体での使用水量を見積もることを可能とした。 また,安価な水位センサであるMilone Technologies 社のeTapeを水田の水位計測に適用し、既存の水位センサとの比較を行った。その結果、降雨による水位上昇の傾向をとらえることができたが、約±2.5cmの誤差が見られた。この誤差が発生した原因がeTapeの性能や性質に起因するものか、あるいは設置の仕方によるものかは今後詳細な検討が必要である。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
3: やや遅れている
理由
研究の柱の一つであるLoRaWANのデバイスの入手に手間取り,現在のところまだ利用可能な状態ではない。しかし,共同研究を行っている京都府与謝野町に設置されたLoRaWAN網のデータを使える可能性があるので,試験フィールドを三重県内にこだわることなく展開していく予定である。 また,購入予定の流量計が設置できそうな地区が見つからなかったが,三重県内で既に農業用パイプラインに流量計が設置されている地区を発見できたので,次年度以降はそれらの地区への研究の展開を予定している。
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今後の研究の推進方策 |
揚水用ポンプの稼働時間の自動記録システムはほぼ完成しているが,数値は人が読み取って記録している。そこで,今年度は画像ファイルから数値を読み取り,自動的にサーバに転送する仕組みづくりを行い,土地改良区等の農業用水の管理者にほぼリアルタイムで水使用状況を伝え,小動物の穴掘りなどに起因する漏水の障害をすばやく検知できるように改良していく。 三重県多気町の立梅用水にGISベースの土地改良区業務支援システム(VIMS)が導入され,主要な用水路に水位計も設置されたので,実際の水管理業を軽減するためにさらにどのようなハードウェア・ソフトウェアが必要かを改良区の職員の方々とのディスカッションを通じて検討していく。 また,降雨時に並走する都市の排水路から用水路に雨水が混入して農業用水の水質が悪化する地区において,用水路内にいくつか水位計を設置して流況を監視し,遠隔からゲート制御などが行える仕組みを考えていく。
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次年度使用額が生じた理由 |
利用を予定していた安価な水位計測システムが実証試験の遅れから水田の灌漑期に間に合わなかったため。通年通水を行っている立梅用水での試験運用で有効性が認められたため,次年度に複数台購入して現場に設置する予定である。
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