研究課題/領域番号 |
17K08001
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研究機関 | 三重大学 |
研究代表者 |
伊藤 良栄 三重大学, 生物資源学研究科, 助教 (30232490)
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研究期間 (年度) |
2017-04-01 – 2020-03-31
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キーワード | 農業IoT / 見える化 / 画像処理 / 水管理 / AI / 深層学習 |
研究実績の概要 |
配水用の揚水機場にインターバルカメラを設置して1時間ごとに画像撮像することにより稼働時間を記録した。従来は,得られた画像ファイルを人が数字を読み取って稼働時間を記録していたが,今年度は画像処理によるメータ数字の自動読み取りを試みた。高画質の画像が得られる室内実験では,Tesseract OCRを用いた方法で二値化の閾値が210の時に最適となり,99.25%の正解率が得られた。しかし,実揚水機場で撮像された画像を用いた解析では,ポンプの3桁全てが一致した正解率は最大で79.67%に止まった。 そこで,深層学習による数字認識を試みた。学習データに2018年の1桁の数字画像6,500枚を用いて,1バッチを50個,1,500バッチ分の学習を行って2017年の画像の数字を予測させた。深層学習10回分の正解率の平均は,1号ポンプで90.06%,2号ポンプで96.10%,全体で93.08%であった。以上の結果より,時刻によって光の条件が異なり,認識対象の画像が比較的不鮮明である揚水機メータの画像認識では,深層学習を用いる方が推定精度が高いことが分かった。 深層学習を使ってもそれなりの誤認識が見られたので,これを自動的に修正する数字自動修正プログラムを作成した。1時間ごとの稼働時間が解析対象なので,単調増加するという性質を利用することにより目視で読み取った値と修正値との差が±1以内を許容範囲とし,修正後の結果がこの範囲内に収まる割合を妥当性と定義した。妥当性は99.99%となり,ほぼすべての時間で妥当な数字が得られる結果となった。 今回はカメラに記録された動画ファイルを適宜取り出してPCで解析した。今後は,撮像データを解析用コンピュータに自動的に転送して,リアルタイムで表示できるようにするのが課題である。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
市場での安価な水位計の開発が遅れているため,農業用水管理の省力化・自動化支援技術の中心を揚水場のポンプ稼働時間の自動収集に変更したところ,画像処理やAI,深層学習技術の発展により予想以上に良い精度でプロトタイプ版を開発することができた。また,年度末にNIIの「SINET広域データ収集基盤 実証実験」に採択されたため,次年度以降は農業農村地域で計測した画像やデータの転送インフラが確保され,本研究の推進が加速されることが期待される。
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今後の研究の推進方策 |
揚水用ポンプの稼働時間の自動記録システムにおいて,画像ファイルから数値の自動読み取りが可能であることが示せたので,今年度はそれをさらに進めて昨年度の積み残しになった自動的にサーバに転送する仕組みづくりを行い,土地改良区等の農業用水の管理者にほぼリアルタイムで水使用状況を伝え,小動物の穴掘りなどに起因する漏水の障害をすばやく検知できるように改良していく。 また,操作パネルが屋外に設置されている環境の厳しい別の揚水機場でも防水カメラを使って同様なことができるかにもチャレンジしていきたい。
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次年度使用額が生じた理由 |
市場での安価な水位計の発売が遅れており,その購入を見送ったため。今年度は揚水機の稼働時間の自動読み取りシステムの開発に集中するため,SBCやモバイル通信機器購入に予算を使用する予定である。
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備考 |
社内ネットワークポリシーのためインターネットへの接続が禁止されていた長野県塩尻市サンサンワイナリー圃場に設置されている気象データ観測システムをMVNOを用いて構築したネットワーク回線に接続し,観測データの自動集と閲覧を可能にした。
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