本研究は、作物栽培圃場における土壌水分・窒素成分・地温、および硝酸態窒素の下方浸透量について、気象予報値を用いて中期的な予測を行うことを目的としている。R1年度は、簡易気象予報を用いることによる土壌水分量・地温の中期予測の精度について把握することを目的とした。 まず、H30年度に構築した不飽和土壌中の水分・熱・溶質移動シミュレーションプログラムHYDRUS-1Dと群落上と地表面の熱収支を同時に考慮する「2層モデル」を連結したプログラムについて,H29年度の現場観測データを用いて検証を行った。2層モデルの重要なパラメータである群落の放射透過率について、観測した地表面被覆率を与えて数値計算を行ったところ、土壌湿潤条件下では土壌水分量・地温変化を良く再現した。ここから、地表面被覆率を用いることで、土壌面蒸発と蒸散の割合を近似的に与えることが可能であることが分かった。一方、土壌乾燥が進行するに従い、実測値との差異は広がったことから、乾燥時の植物根の吸水分布について、より詳細な検討が必要であると言える。 さらに、農研機構メッシュ農業気象データで取得した気象予測値を用いた、数日~1週間程度の作土層内の土壌水分・地温変化の予測について、数値実験を行うことで予測精度について検討を行った。1週間程度の予測の場合、日降水量の有無、および日射量のずれが土壌水分量・地温変化に影響を与えたものの、平均で土壌水分量は0.01 cm3/cm3,地温は2.3℃の誤差で予測可能であることが示された。今後は多降雨期間や、土壌水分・地温の実測値に対する予測精度の検証が必要である。
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