研究課題/領域番号 |
17K08004
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研究機関 | 岡山大学 |
研究代表者 |
工藤 亮治 岡山大学, 環境生命科学研究科, 准教授 (40600804)
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研究分担者 |
近森 秀高 岡山大学, 環境生命科学研究科, 教授 (40217229)
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研究期間 (年度) |
2017-04-01 – 2020-03-31
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キーワード | 渇水流量 / 気候変動 / 不確実性 / d4PDF |
研究実績の概要 |
まず,本研究で気候シナリオとして用いるd4PDFの入手した.d4PDFは日本付近を対象とした解像度20kmの領域実験と解像度60kmの全球実験に分けることができる.本研究では全球実験を用いることとし,この中から過去実験として1981-2010年,4℃上昇実験として2071~2100年の30年分の気象データ(日降水量,日最高/最低気温)を収集した.本年度は対象流域に岡山県の黒木ダム流域を選定し,全球実験から該当する領域のデータの切り出した.次に,d4PDFと実測気候値間の系統誤差(バイアス)の補正を行った.補正法にはCDFマッピング法を用い,実測の日降水量,気温の統計量と補正したd4PDFの値が一致することを確認した. 次に,影響評価の試算として黒木ダム流域においてバイアス補正を施した現在気候値,将来気候値を対象流域で構築したタンクモデルに入力し,影響評価およびその不確実性の分析を試行的に行った.d4PDFで得られる3000年分のデータからかんがい期間中の渇水流量(期間中で非超過率5%となる日流量と定義)の頻度分布を求めその10年確率値の変化を吟味したところ,およそ5%減少するという結果が得られた.ただし,先行研究で得られているように渇水流量は気候シグナルが小さく,不確実性が非常に大きいことを確認した. また,実測のダム流入量を用いて低水時流量の年変動を吟味した.実測データはダム諸量データベースから上流にダムが存在しない20のダムを用い,かんがい期を対象に渇水流量の発生時期を調べた.その結果,北陸や東北日本海側では低水流量の発生時期がほぼ一定なのに対し,中四国や九州北部のダム流域では低水流量の発生時期が一定ではなく,かんがい期中のどの時期でも低水流量が発生していることが示され,この低水流量の発生時期の特性の違いが,影響評価の不確実性を大きくしている可能性が示唆された.
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
初年度に実施予定である「流域の乾湿条件の特性と低水流量の関係性の吟味」については分析途中であるものの,2年目以降に実施予定であった「ダム流域における渇水リスク変化の分析」に取り組み始めることができたため,課題全体として概ね順調であると判断した.
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今後の研究の推進方策 |
H30年度の計画として,まずd4PDFを用いた影響評価を他地域の流域で行うことが挙げられる.H29年度は岡山県のダム流域のみで影響評価を実施したが,この結果を比較検討するため,東北や北陸など低水流量の発生時期の年変動が小さい地域と比較し,影響評価における不確実性の地域性について検討を始める. 次に,最終年度の渇水影響マップの作成に向け,全国を対象としたd4PDFのバイアス補正に着手する.具体的には,全国の実測気象データの収集を開始し,データがそろい次第バイアス補正を開始する. また,補正したd4PDFを用いて,過去に発生した大規模な渇水事象(H6渇水など)の確率年の推定を行う.この検討は,影響評価を行うダム流域を対象とするが,バイアス補正が間に合えば全国的に検討を行う予定である.
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次年度使用額が生じた理由 |
急な公務により,参加予定であった学会への参加を取りやめたため.
平成30年度より全国を対象とした課題に着手する為,データを収録するハードディスク等の購入の加算分として使用する予定である.
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