研究実績の概要 |
渇水流量の影響評価を行う流域として,新たに最上川水系の寒河江ダム流域を対象とした流出解析を行った.まず,本流域は豪雪地帯であるため水収支を検討したところ特に冬季の降水量が大きく過小になっていることがわかった.そこで,冬季降水量の補正方法として風による降雪の補足率低下に注目し,風速による降雪量の補正を行って水収支の吟味および流出解析を行った.その結果,降水量を年間一律で割増す従来の方法に比べ,融雪後期のダム流入量及び秋季の低水流量について再現性が向上した.ただし,融雪後期については風速の補正を行っても計算流量が観測流量よりも過小となる年があり,さらなる改善の余地があると言える.気候変動影響評価については,後述するようにd4PDFの全国データセットのバイアス補正が遅れていたため,CMIP5データを用いて行い,将来の予測気温が降雨降雪の閾値付近にばらつく場合に,融雪流出量でも評価の不確実性が大きくなることがわかった.渇水流量における不確実性の分析は2019年度に行う予定である.
次に,H29年度に入手したd4PDFのバイアス補正を行った.全国版の広域水循環モデルの空間解像度である5kmとし,日本全国を対象に日単位の気象要素(日降水量,日平均気温,日平均相対湿度,日平均風速,日積算日射量)を補正した.正規分布を用いた気温や日射量は現在気候3000年分,将来気候2700年分のバイアス補正が終了したが,ガンマ分布を用いる日降水量と日平均気温では,近似解法を用いているため非超過確率の大きい値で異常値が発生してしまった.そこで,補正を行う上限値を設け,何度も補正をやり直した.その関係で,バイアス補正は少し遅れ気味となっている.
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