全国5つのダム流域(北海道×1,東北日本海側×2,中国,四国地方×2)を対象とし,バイアス補正済みのd4PDFを,前年度に構築した風速による降雪量補正を導入したタンクモデルに入力することで影響評価を行った.影響評価では,評価指標の変化率(将来気候下の水文量/現在気候化の水文量)を現在気候の100メンバー×将来気候の90メンバーの9000通りの組み合わせで求め,変化率分布をもとに評価の不確実性を吟味した.なお,10年確率代かき期および出穂期渇水流量(代かき期,渇水期における半旬平均流量の10年確率値),10年確率日流量の計3つを評価対象の水文量とした.その結果,代かき期渇水流量については,北海道や東北日本海側などの積雪地帯では気温上昇の影響を受け融雪流出が早まるため,9000通りのどの組み合わせでも減少傾向(変化率が1以下)を示しており,傾向の整合性が高く評価の不確実性が小さいことが分かった.一方,中四国地方の代かき期渇水流量は降雨量に支配されるため,変化率が1以上となるケース(増加傾向),1以下となるケース(減少傾向)の両者が混在し,評価の整合性が低いことが分かった.ただし,変化率の頻度は0.9~0.6となるケースが多く10~40%程度の減少となる可能性が高いことが示された.また,出穂期渇水流量は最上川水系寒河江ダムを除いて,若干の増加~半分程度に減少となるケースまで幅広く分布しており評価の不確実性が大きいことが示された.10年確率日流量についても変化率は幅広く分布しているが,おおむね度の流域でも10~30%の増加傾向となるケースが多かった.以上より,渇水流量などの年変動が大きい現象では自然変動が大きいため,気候変動のシグナルが現れにくい.そのため,こうした自然変動の大きい現象を対象とした影響評価には,d4PDFのような大規模なアンサンブルデータが必須となることが分かった.
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