研究課題/領域番号 |
17K08008
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研究機関 | 東京農業大学 |
研究代表者 |
鈴木 伸治 東京農業大学, 地域環境科学部, 教授 (00459710)
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研究分担者 |
渡邉 文雄 東京農業大学, 地域環境科学部, 教授 (20256647)
岡澤 宏 東京農業大学, 地域環境科学部, 教授 (30385504)
伊藤 博武 東京農業大学, 生物産業学部, 教授 (50307683)
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研究期間 (年度) |
2017-04-01 – 2020-03-31
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キーワード | 気候変動 / 吸水度 / 降雨強度 / 湛水 / 誘電土壌水分センサ |
研究実績の概要 |
強度の強い雨によって湛水し,表面流去が生じると,土壌侵食や水質負荷の流亡の引き金となる。誘電土壌水分センサを用いて湛水の直接的な観測を試みたところ,目視による観察とよく一致した。また,土壌の吸水度を用いたモデルによる判定ともよく一致した。そこでモデルと観測結果を用いて検討したところ,土壌水分量によらずに湛水が生じる降雨の強度は8.5 mm/10分であることが明らかになった。さらに,1940~2016年までの気象データを用い,10分間で8.5 mm以上の降雨の発生頻度についてKendall検定を用いて調べたところ,1%の有意水準で増加の傾向がみられた。なお,モデルで必須となる土壌水分量と吸水度の関係は,季節を通じて一定であることが確認できた。 短時間強雨による湛水発生のリスクを回避するためには,水を下方に浸透させる方法を検討する必要がある。雨水の下方浸透を促進させる要素として,根成孔隙が期待できる。また実際の農地で生じる湛水を評価するためには,湛水発生のメカニズムを検討する必要があり,湛水がどのような状態で生じるのか知見の蓄積が必要である。そこでトウモロコシを用いて,雨水や土壌面湛水の浸透に及ぼす根成孔隙の影響を検討した。その結果,作物根による顕著な効果は認められなかった。飽和透水係数が影響する毛管飽和状態は5 cmより薄いことが示唆された。湛水発生時の最大の体積含水率は、毛管飽和状態に対して小さい値を示した。このことから表層が不飽和な状態でも湛生が生じていることが明らかとなった。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
以下の理由による。 ・湛水発生を直接観測できる手法が開発できたこと ・湛水が生じる降雨の強度を明らかにできる手法が開発できたこと ・湛水発生や湛水浸透のメカニズムについて考察できたこと
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今後の研究の推進方策 |
以下の項目について検討する ・湛水発生を直接観測できる手法を鶏舎のうちに応用し,湛水発生と表面流去の関係について検討する。 ・短時間強雨による土壌侵食のリスクは,農地が裸地である状態において高いので,短時間強雨の発生頻度の季節変動について調べるとともに,農地が裸地となる状態の季節による変動について広域的に調査する。 ・雨水を積極的に下方に浸透させる方策について検討する。 ・連続干天のリスク評価について検討する。
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次年度使用額が生じた理由 |
観測サイトのメンテナンスが順調に行われ,出張が少ない回数で済んだことが主な根拠である。次年度には,国内での調査のための旅費,国際学会での発表のための旅費,学術論文の投稿料として使用する。
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