研究課題/領域番号 |
17K08015
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研究機関 | 岩手大学 |
研究代表者 |
折笠 貴寛 岩手大学, 農学部, 准教授 (30466007)
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研究期間 (年度) |
2017-04-01 – 2020-03-31
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キーワード | 減圧マイクロ波 / ブランチング / 品質 / 消費エネルギ / 乾燥速度の増加 / ライフサイクルアセスメント |
研究実績の概要 |
農産加工操作の1 つである乾燥工程は、加熱を伴う処理であるためエネルギ消費量が多く、環境負荷の大きなプロセスとされている。青果物の乾燥効率の向上を図る手段として、乾燥前にブランチング処理を行う方法がある。今年度は、乾燥パプリカを対象とし、ブランチング試料の乾燥速度の増加とそのメカニズムの解明に加え、乾燥速度の増加に伴う消費電力削減効果について検討した。その結果、過熱水蒸気ブランチングによりパプリカの遠赤外線乾燥過程における乾燥速度は約1.6倍増加し、それに伴い消費電力量は30%削減された。試料表面硬度および電気インピーダンスの測定結果より、乾燥速度が増加した要因は、試料表面硬化の抑制および細胞膜の損傷と推察された。 また、ドライトマトの製造工程に減圧マイクロ波処理を適用し、リコペン残存率、DPPHラジカル消去活性、色調および官能評価を行い、減圧マイクロ波を用いた新たな高品質加工技術の確立について検討するとともに、単位蒸発水分当たりの消費電力量を評価し、減圧マイクロ波処理の持続可能性について検討した。その結果、減圧マイクロ波処理は既存の処理方法と比べて5倍~29倍程度消費エネルギを削減する効果があることが示された。これは、減圧マイクロ波処理の乾燥時間が大幅に短縮したこと(減圧マイクロ波処理:0.5 h、熱風処理:72 h)に起因すると考えられた。また、DPPHラジカル消去活性、色調、官能評価の結果はいずれも減圧マイクロ波処理試料の値が良好な結果となったことから、減圧マイクロ波処理の高品質な加工処理技術としての有効性が確認された。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
本年度は、農産加工プロセスにおける品質変化の予測モデルおよびLCA手法による環境負荷に関わる解析を実施した。昨年度公表できなかった乾燥特性の解析も含め、得られた成果は2報の学術論文として、Journal of Food QualityおよびJournal of Food Processing and Preservationに公表された。当初予定していた品質変化予測に関わる研究成果に加え、次年度に実施予定であったLCAに関わる研究成果も一部先行して得られたことから、進捗状況はおおむね順調であると判断される。
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今後の研究の推進方策 |
次年度は、乾燥キャベツのブランチングを一例として、すでに決定された最適条件に従って青果物を乾燥し、ブランチング処理試料の乾燥速度の増加を定量的に示すとともに、エネルギ投入量などの一次データを取得し、LCA手法により環境負荷の定量化を行う。これまでの研究機関で得られて結果を総合し、環境負荷やコストを低減しつつ、青果物の品質を保持できる新たな乾燥理論の構築に資するデータを取りまとめる。
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次年度使用額が生じた理由 |
本年度は、当初計画していたルーベン・カトリック大学(ベルギー)への出張費用を大学の予算と折半して支払うことになったため、本予算で全額を支出する必要がなくなった。また、当初2回のベルギー出張を計画していたが、先方の都合が付かなくなったことと、メール会議で打ち合わせを実施したため、ベルギーへの出張は1回のみとなった。また、当初本予算での雇用を予定していた技術補佐員の経費を別の外部資金で支払うことができたため、人件費の執行額が当初予定より低くなった。これらのことから、666,666円の残額が発生した。残額分については、ベルギーへの研究打ち合わせおよび技術補佐員の人件費として全額執行する見込みである。
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