研究課題/領域番号 |
17K08015
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研究機関 | 岩手大学 |
研究代表者 |
折笠 貴寛 岩手大学, 農学部, 准教授 (30466007)
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研究期間 (年度) |
2017-04-01 – 2022-03-31
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キーワード | 減圧マイクロ波 / パルス電解前処理 / 乾燥速度の増加 / 品質 / 青果物流通 / 消費エネルギ / ライフサイクルアセスメント |
研究実績の概要 |
調理用トマトの乾燥粉末化を検討する際、他の加工品との差別化が可能となる高付加価値加工技術の確立が現場で切望されている。本研究では、簡便な前加熱処理の導入によりグアニル酸が増加することが確認され、トマトパウダの食味が向上する可能性を示した。また、減圧マイクロ波(以下、VMW)によるトマトピューレの濃縮工程後の加熱処理がトマトピューレの食味および成分に与える影響について検討した。その結果、濃縮後の20分加熱処理により、グルタミン酸およびアスパラギン酸が最大の値となった。トマトピューレに含まれるリコペンは、濃縮後の加熱処理によりトランス型からシス型への異性化が起こった可能性が考えられた。 一方、シイタケの乾燥処理にVMWを適用し、物理的特性および化学的特性の評価を行った。その結果、VMW乾燥は既存の熱風乾燥と比較して、乾燥時間が約13分の1~100分の1となった。圧力の低下は乾燥試料の膨化を引き起こし、復水性が高まったことにより軟化が促進されたと推察された。乾燥シイタケの傘およびだし汁の官能評価において、3 kPa-25 W/g DMで処理されたVMW乾燥シイタケは、評価した4条件の中で総合的に最も高く評価された。 更に、カットリンゴを対象に、乾燥前処理としてパルス電界処理を適用し、熱風乾燥における乾燥速度および品質変化に及ぼす影響について評価した。その結果、乾燥時間の短縮が確認されたが、品質面では褐変が著しく進行し、ポリフェノールが減少する結果となった。これは、パルス電界処理に伴って生じる細胞膜損傷によって物質移動が容易になった結果、生体内での化学反応が促進されたと推察された。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
本年度は、VMWおよびパルス電解処理を用いた農産加工食品の高付加価値化に関して品質面を中心とした検討を行った。これらの結果は、Innovative Food Science and Emerging Technology、Food Science and Technology Research、農業食料工学会誌および日本食品科学工学会誌に4本の学術論文を公表するとともに、農業食料工学会東北支部2020年度年次大会において研究発表を行った。 農産加工食品の高付加価値化に関して物理化学的特性を考慮した解析を行い、VMWおよびパルス電解処理の有効性について評価できたことから、研究の進捗状況はおおむね順調であると判断される。
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今後の研究の推進方策 |
次年度は、イチゴおよびモモの輸送プロセスと対象とし、緩衝包装の違いが損傷率に及ぼす影響を考慮した環境負荷について、LCA手法を用いた評価を行い、、学術論文として取りまとめる作業を行う(J Food Eng誌またはInt J LCA誌を予定)。これまでの研究期間で得られて結果を総合し、環境負荷やコストを低減しつつ、青果物の品質を保持できる新たな農産食品製造理論の構築に資するデータを取りまとめる。これにより、当初目的の達成および研究成果の広範囲な周知が可能となる。
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次年度使用額が生じた理由 |
新型コロナウイルス感染症の影響により、予定していた研究協力者との研究打ち合わせが中止となったことから、当初予定していた研究経費が執行できない状況にあった。本年度は、イチゴおよびモモの輸送プロセスと対象として緩衝包装の違いが損傷率に及ぼす影響を考慮した環境負荷に関してデータの再解析を行い、学術論文として取りまとめる作業を行う(J Food Eng誌を予定)。これら研究成果の取りまとめおよび公表に関わる一連の取り組みにより、残りの研究費は全額執行見込みである。
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