本研究では,台木と穂木の組み合わせによって,トマトの果実の糖度や収量を任意に制御する手法を確立するために,ホルモン作用のアンバランスが生じるメカニズムを解明し,あわせて,植物体内の水移動や水分分布の変化について調査を行った. 植物ホルモンのアンバランスについて以下が明らかになった.オーキシン阻害剤の投与がナス穂木・トマト台木に与える影響を調査をした結果,ナス穂木とトマト穂木に対するオーキシン輸送体の阻害に差が生じたことから,ナスとトマトのオーキシン輸送のシステムは異なっていると考えられ,異種間接ぎ木により穂木-台木間のオーキシン輸送が異常になることで根の形態変化が生じると示唆された.また,オーキシン輸送体阻害剤として1-ナフチルフタラミン酸(NPA)を与え,穂木と台木の間に形態変化がどのような形で現れるかを指標として,台木および穂木の間のホルモンのアンバランスを評価した.その結果,ナス穂木とトマト穂木に対するオーキシン輸送体の阻害に差が生じたことから,ナスとトマトのオーキシン輸送のシステムは異なっていると考えられ,異種間接ぎ木により穂木-台木間のオーキシン輸送が異常になることで根の形態変化が生じることが推察された. 植物体内の水移動や水分分布の変化について以下が明らかになった.ナス台木とトマト穂木およびトマト穂木となす台木の接ぎ木において通水抵抗を水供給能力を示す指標とし,根量,草丈および果実糖度に与える影響を調査した.その結果,トマト台木に接いだナスの果実糖度が低下し,草丈が他の処理区より高くなった.これは,台木トマトの根域が肥大したことで,不親和による通水抵抗の増大を相殺,あるいはそれ以上の吸水が起こったこと原因であると推察された.
|