研究課題/領域番号 |
17K08017
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研究機関 | 宇都宮大学 |
研究代表者 |
松井 正実 宇都宮大学, 農学部, 教授 (10603425)
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研究分担者 |
井上 英二 九州大学, 農学研究院, 教授 (00184739)
田村 孝浩 宇都宮大学, 農学部, 准教授 (20341729)
光岡 宗司 九州大学, 農学研究院, 助教 (60437770)
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研究期間 (年度) |
2017-04-01 – 2020-03-31
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キーワード | 農作業事故 / トラクタ / コンバイン / 微地形測量 / 挙動モデル |
研究実績の概要 |
平成30年度の研究実績として,概略地形と路面粗さによる走行地形の再現を行うために開発した微地形測量用高精度レーザー変位計を用いて,圃場へのアクセス路(アスファルト,砂利,土)の測定を行った。その結果,同路面延長上の表面粗さは,5m単位の測定位置によって粗度の分布が異なること,測定延長を伸延すればISO8608で示された粗さの基準に概ね準じていることが判明した。 事故情報収集については,危険を回避した事例収集のため,農家と法人を対象に聞き取り調査を実施した。その結果,危険を感じる場所として圃場進入路が最も多く,進入路の地形改善に取り組んでいることがわかった。地形改善では傾斜緩和と拡幅が最も多く,次に進入路の新設に取り組んでいる実態が明らかになった。一方で,公共用地を含む場所や排水溝などが設置されている場所では改善が難しいという実態も判明した。 トラクタおよびコンバインの挙動モデルについては,路面や走行速度等のあらゆる外的影響を考慮した動的挙動再現のため,上下,前後,ピッチング,ローリング方向の4自由度の運動方程式でモデリングを行い,傾斜地走行時および遠心力作用時の影響について調べた。その結果,傾斜耕作地の旋回時や圃場間移動時の進入路旋回等において,遠心力の影響による横転倒の危険性が大幅に上昇することがわかった。 機体挙動安定化のための駆動TCS開発については,基本的な挙動安定化に向けた制御対象として,トラクタのピッチング転倒を想定した後輪の駆動トルクの増減について検討した。駆動トルク増減は機関出力とブレーキ力を最大値としたPID制御とした。シミュレーションではピッチング転倒事例として微地形測量を行った事故現場地形を用いた。その結果,最大ピッチング角が88%程度まで緩和され,ピッチング角の抑制を可能とすることがわかった。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
平成30年度の研究実績として,平成29年度に設計製作した微地形測量のための高精度レーザー変位計を用いて,実際の圃場周辺地形における運用を開始することしていた。測定項目については,移動距離,地形高さ,機体変位および変位角とし,外乱や植生によるエラー値のフィルターを設け,安定した記録が行えた。 事故現場調査については,農家4軒,法人7件について主に安全対策に関する情報収集を行った。聞き取りの結果は,発話データ分析手順により抽出・類型化し,作業者の行動や意図が何を対象とした安全対策であるのかについて判定し,作業者の危険感・安心感に与える影響から,地形改善前と改善後の特徴を抽出することができた。 トラクタおよびコンバインの挙動モデルでは,車輪や履帯がスリップせず(最も危険な状況を想定)遠心力が全てローリング方向に作用する状況を想定した場合,4自由度の運動方程式で遠心力を考慮した挙動を再現可能であることを模型実験により確認した。 機体挙動安定化のための駆動TCS開発については,実際のトラクタやコンバインの構造を調査し,本年度,トラクタの駆動TCS開発を実施した。制御ではPID制御を行うこととし,機体姿勢により駆動力および制動力を適宜与えた。シミュレーションでは一定の効果が確認できた。 以上の進捗状況から,当初目標とした研究計画に沿った進捗であると判断した。
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今後の研究の推進方策 |
上記の進捗状況の通り,当初研究計画に沿って推移しており,平成31年度についても計画通り推進する。 平成31年度は,微地形測量のための高精度レーザー変位計を実際の圃場周辺地域においてより多くのデータ取得を行い,国内における圃場周辺環境の特徴を整理する。 事故現場調査については,これまで収集した情報の分析を進め,ヒヤリハット事例を含めて効果的な事故低減への項目抽出を行い,土地改良区などの設計基準改善の提言としてまとめるとともに,圃場周辺環境の改善に資する項目を整理する。 トラクタおよびコンバインの4自由度挙動モデルについては,遠心力を考慮した場合においても適用可能であることが確認できたため,機体挙動安定化のための駆動TCS開発を進め,より効果的な制御アルゴリズムの検討を行う。 以上の研究成果を取りまとめ,研究成果としたい。
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