1.光合成に関する基本特性の解明: 昨年度の結果、光合成有効光量子束密度(以下、PPFD)100μmol m-2 s-1よりもPPFD 300でより高い光合成速度が得られたものの、PPFD 300では明期開始後数時間で急激に低下し、葉に可視障害が出ることが明らかになった。今年度は昨年度に引き続き、自作の個体群用同化箱を用い、明暗周期とPPFDを組合わせにより、日積算光合成量が最大となる照射パターンを探索した。様々な光条件下で光合成および蒸散速度を測定した結果、PPFD 300では短時間でも光合成・蒸散速度が急激に低下し、PPFD 300と100を組合わせて照射しても、日積算光合成量を有意に高める条件は見い出せなかった。よって、チャボイナモリでは、PPFD 100~150以下で明期延長により日積算光合成量を増やす方法が適していると示された。
2.カンプトテシン(全身に蓄積する抗がん作用のあるアルカロイド、以下CPT)を高める環境条件の探索: CPTを高蓄積する茎や根にUVを照射したところ、乾物重あたりのCPT濃度の有意な増加はみられなかった。次に、地下部に浸透ストレスを付与するため、培養液にポリエチレングリコール(PEG)を添加し、3日間のチャボイナモリの生育および乾物重あたりのCPT蓄積に及ぼす影響を調査した。その結果、2~3日間のPEG処理で茎や根の乾物重あたりのCPT濃度を高める可能性が示された。この結果は高培養液浸透圧で減少した含水率の影響(濃縮効果)ではないと考えられた。
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