研究課題/領域番号 |
17K08020
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研究機関 | 神戸大学 |
研究代表者 |
庄司 浩一 神戸大学, 農学研究科, 准教授 (10263394)
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研究期間 (年度) |
2017-04-01 – 2020-03-31
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キーワード | 回転羽根 / 回転数制御 / 作用深さ / コナギ / イヌホタルイ / 葉齢 / 除去率 / 欠株率 |
研究実績の概要 |
水田における環境保全型農業(有機栽培,無農薬栽培)での隘路となっている除草技術,特に株間における水稲と雑草との選択除草に焦点を当て,雑草の引抜きを実現しつつも水稲への損傷を抑える方法として,回転羽根のスキッド(引きずり)を調整できる除草機の開発と実際の水田での評価を行った。昨年度の試作機では株間除草に直接関与しない条間除草が不完全であった点を改め,本年度は条間除草機構を回転ロータに置き換えた上で,スキッド制御ができる株間除草機構も2条分製作し,株間除草性能データの精度を高めることとした。 水田の実験では,除草強度が調整できる利点を生かして,農繁期の作業の輻輳を避けられるように,通常機械除草で設定される作業日よりも遅いタイミング(移植後15~30日目)で1回のみ作業を行って評価した。移植後15日目の作業ではスキッド70%で雑草の除去率80%まで実現したものの水稲の欠株が半分以上となったため,スキッド50%程度が除去率60%で欠株率10%以下と妥当な設定であった。移植後30日目の作業ではスキッド60%程度の設定で除去率60%・欠株率ほぼゼロであった。回転羽根の作用深さについては,雑草の除去率には大きく影響せず,むしろ水稲の欠株率に影響することがわかり,3cm程度の設定が適切と判断された。水稲の収量については,欠株がない条件での調査では除草条件に大きく影響を受けず,単収400kg弱(精玄米)であった。 このように株間雑草の除去率は従来の除草機構と同等のまま,除草作業が有効な期間が従来よりも20日程度後倒しにできることが,昨年度の結果も含めて改めて示され,現場の農作業として受け入れやすい技術であることがわかった。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
研究費の交付を受けてから2年間で除草機の試作機2種を供し,2年にわたって農家水田で実験ができ,当初3年間の研究計画に相当する作業はすでに完了したので,当初の計画以上と考える。ただし,供試した水田では機械除草で特に難防除といわれる多年生雑草がほとんどなく,本研究で提案する手法がそれらに対して有効かどうかを確認できなかった点が,若干差し引いて考慮すべき点である。
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今後の研究の推進方策 |
本研究の有効性をさらに検証するために,コナギやイヌホタルといった一年生の雑草のみならず,過去2年間で必ずしも確認できなかった,クログワイやオモダカといった多年生雑草(難防除雑草)が発生している場合の除草性能について検討する。このため雑草が多発する水田を研究用に管理している試験場の方に分担者として参画してもらい,試験場用に規模を縮小した除草機の試作機を実験に供する。
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次年度使用額が生じた理由 |
本研究費補助金が交付される直前に,既存機の除草ユニットの一部が別予算で調達でき,中古として譲渡されるベース車両の運搬費も譲渡者の配慮で不要となった。これらで生じた剰余がほぼ年度越しで反映された。 一方で2019年度の新たな計画では,当初の予定になかった規模を縮小した除草機の試作機を供することとなったため,この製作費に余剰の充当を予定している。
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