農産物の保存中における微生物叢の分析では、イチゴを用いた保存試験を実施した。産地の異なるイチゴを用い、研究室保有の電界発生装置の付帯冷蔵庫を用いて保存した後の存在微生物について比較したところ、電界の有無あるいは産地の違いによって、存在する細菌群が異なる傾向を示した。宮崎産のイチゴにおいては、電界条件ではガンマプロテオバクテリアを中心としてエウィンゲラ属やセラチア属が多く存在していたが、単純保存では、コサコニア属、ハフニア属が多く検出された。その他は乳酸菌であるワイセラ属が共通して検出された。また、北海道産のイチゴについては、電界条件下では、カートバクテリウム属やシュードモナス属が検出された一方、単純保存では酵母やカビが多く検出された。宮崎と北海道では気温が20℃程度の差があったため、存在する微生物叢には違いがあることは予想できたが、電界の有無によっても差が生じたことは興味深い結果である。保存後果実の内容成分品質には大きな違いは認められなかったが、表面色にはやや差がみられた。この差が電界の有無によるものか、存在微生物の違いによるものかについては明確な解析はできなかったことから今後も引き続き検証を重ねる必要がある。また、微生物の増殖においては環境ストレスへの暴露履歴の有無は重要であるが、大腸菌を対象として、物理処理の代表である高圧処理を実施し、処理履歴の有無によって形成するバイオフィルムの特徴の違いについても検証した。その結果、150MPa以上の大きな圧力を加えると、増殖時に検出される生菌数そのものは変化しないものの、バイオフィルム形成は有意に抑制されることが明らかとなった。今後も引き続き、致死レベルに達しないような環境ストレスを付与することで微生物増殖の効果的な制御が可能となる処理法の提案が求められる。
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