研究課題/領域番号 |
17K08023
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研究機関 | 東京農業大学 |
研究代表者 |
村松 良樹 東京農業大学, 地域環境科学部, 教授 (60328549)
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研究期間 (年度) |
2017-04-01 – 2020-03-31
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キーワード | 減圧過熱水蒸気 / ブランチング / 脱水凍結 / 解凍 / 青果物 |
研究実績の概要 |
本研究では,ブランチングや脱水方法など凍結前処理方法を数種類に変えて青果物を凍結する。また,数種類の解凍法も適用する。これらの処理において減圧過熱水蒸気加熱も適用する。凍結前処理も含め,凍結および解凍過程における青果物の物理的特性や品質特性を測定し,前処理方法や解凍方法が青果物の品質特性に及ぼす影響を明らかにする。 本研究の目的は1)脱水凍結の優位性を示すこと,2)加熱処理に減圧過熱水蒸気を適用することの優位性を示すこと,3)最適かつ新規凍結貯蔵法を提案することである。さらに,凍結解凍装置の開発や操作の最適化に向けて,数値シミュレーションを行うことも目的としている。 今年度は,減圧過熱水蒸気加熱装置を製作した。この装置を用いた青果物のブランチングに関する研究を実施した。減圧過熱水蒸気加熱法,熱湯浸漬法,蒸し加熱法によりニンジンにブランチングを施した。ブランチング中の試料温度変化や酵素の失活状況,ブランチング前後の試料の質量損失率,色彩,カリウム残存率,L-アスコルビン酸残存率,硬度を測定した。その結果,熱湯浸漬,蒸し加熱に比べて減圧過熱水蒸気加熱による酵素失活時間は長かった。色彩変化は減圧過熱水蒸気加熱で大きかった。減圧過熱水蒸気は,水溶性成分の溶出を抑えることができ,熱湯浸漬に比べて優位性が示された。 また,減圧過熱水蒸気加熱を解凍にも適用した。4種類の解凍法:空気解凍法, ブライン解凍法, 減圧過熱水蒸気加熱解凍法, マイクロ波加熱解凍法により冷凍鶏肉を解凍し,その後,加熱調理を行った。凍結・解凍時の試料温度変化,解凍および調理前後の質量損失率と水分,調理後のテクスチャーなどを測定した。マイクロ波加熱解凍を除く解凍法では,解凍後と生試料との色差が小さかったため,タンパク質変性は起きていないことが示唆された。減圧過熱水蒸気加熱による解凍時間は 空気解凍の約1/5であった。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
研究協力者や他研究者からの助言もあり,本研究の目的に合致した既存の機器を組み合わせるなどして減圧過熱水蒸気加熱装置を試作することができた。加熱チャンバーの特注に関しては,製作メーカーも比較的容易に見つけることができた。 試料温度や色彩変化,L-アスコルビン酸,パーオキシダーゼ活性などの各種測定では,購入した器具に加えて,現有の設備・装置を活用できた。また,これまでの研究成果も参考になった。 数値計算ソフトの使用法に関してはセミナーに参加することができた。数値計算,数値シミュレーションは,研究協力者ならびにソフトウェア販売代理店の協力も得ることができた。 これらのことから,おおむね順調に進展できたと考えている。
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今後の研究の推進方策 |
試料も追加しながら前年度に引き続き,各種測定を実施する。具体的には熱湯浸漬法,常圧蒸気加熱法(蒸し加熱),減圧過熱水蒸気加熱法でブランチングした試料を,熱風乾燥法,減圧乾燥法,常圧および減圧マイクロ波乾燥法,過熱水蒸気乾燥法により脱水する。脱水した試料をブライン凍結法で凍結し,1週間程度,-20℃で冷凍貯蔵する。凍結貯蔵した試料を,3種の解凍法:空気解凍法,マイクロ波加熱解凍法,減圧過熱水蒸気加熱法で解凍する。 試料の温度変化,質量変化および色彩変化は,ブランチング,脱水,冷凍および解凍時に測定する。質量変化の測定結果から解凍時におけるドリップ量も求める。ブランチング前後,脱水後,解凍後の成分変化(L-アスコルビン酸,カリウムなど)も把握する。この他,脱水凍結した試料を解凍し,解凍後の試料水分を脱水前まで上昇させて,テクスチャーを測定する。 各処理過程における上記の諸特性や物性の変化は数値計算ソフトウェアを用いて予測モデルを構築する。また,試料内部での熱や物質移動現象を解析して凍結・解凍シミュレーション,脱水シミュレーションを試み,凍結,解凍時の温度変化,脱水時の水分変化を精度良く予測できる手法を開発する。また,減圧過熱水蒸気加熱装置内での熱流体解析も試みる。
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次年度使用額が生じた理由 |
他業務との日程調整ができず,研究打合せのための出張を取りやめたため旅費が未使用だったこと,減圧過熱水蒸気加熱装置試作にかかる経費が想定よりも抑えられたことが理由と考えられる。国内外の学会に参加して他研究者と意見交換を図りながら,次年度の研究を遂行していく。
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